19世紀フランスの風景画 Le paysage au 19e siècle

テオドール・ルソー

1830年以降になると、歴史的風景画とは違う風景画が描かれるようになる。
神話や歴史といった物語性を持たず、自然の光景そのものを対象する風景画が、フランスで初めて描かれ始めるのである。その中心的な存在がテオドール・ルソー(1812−1867)。バルビゾン派の形成に中心的な役割を果たす画家である。

詩人で美術評論家でもあったシャルル・ボードレールは、『1846年のサロン』の中で「歴史的風景画」を批判した。実際の風景を見ず、既存の理想的な風景を描くだけになってしまうと、画一化された風景画になってしまう。風景の構図、描き方、神話的・歴史的人物の存在など、どの絵を見ても一定の規則に則って描かれている印象を与える。実際、どの歴史的風景画を見ても区別がつかないほど、画一的な感じがするのも確かである。

ボードレールが主張するのは、第一に現実に基づくこと。そのためには、実際の風景を観察しなければならない。その上で、単なる忠実な再現であってもならない。画家は自分の気質に基づき、風景の特色を選び出し、誇張や省略なども行いながら、個人的な風景を作り出すことが必要だとされた。

そうした中でボードレールの最も評価したのが、テオドール・ルソーだった。彼の代表作の一つは、「アプルモンの樫、フォンテーヌブローの森 」(1852)。

Théodore Rousseau, Chênes d’Apremont

テオドール・ルソーの評価が定まるのは1850年くらいからで、それ以前はサロンに出展しても受理されず、賞賛する美術批評家はそれほどいなかった。
それにもかかわらず、1845年、1846年に、ボードレールは彼を最も優れた風景画家として高く評価したのだった。
ボードレールによれば、ルソーは風景画を美しいものにする条件を全て備えていて、新しい風景画の推進者だった。その絵画の特色は、次のような言葉で表現される。メランコリックな雰囲気。青みがかった色彩。水分を含み独特な夕日。木陰にはそよ風の流れ。光の影の戯れ。色彩は雄大だけれど、弾けるような感じはしない。空はふわふわとして軟らかい。

この時ボードレールが目にしていたのは、次の様な作品だろう。

Théodore Rousseau, Coucher de soleil à l’Auvergne
Théodore Rousseau, sous les hetres le soir

1834年にサロンに入選した「コンピエーニュの森の端」も、ボードレールの頭にあったかもしれない。

Théodore Rousseau, Lisière d’un bois de coupe foret de Compiègne

実は、テオドール・ルソーも最初の頃は歴史的風景画を描いていた。例えば、1830年作「オヴェルニュ地方の山々」。

Théodore Rousseau, Valley dans les montagnes d’Auvergne

動きがなく、それぞれの部分が固定化し、時間が止まったような風景。この表現を見た後で、1848年の「未知の近くの沼」を見ると、その違いは一目瞭然である。

Théodore Rousseau, La mare près de la route, ferme dans le Berry

初期の作品と比べてみると、19世紀中頃、新しい風景画がどのようなものになったのかがはっきりと感じられる。伝統的に絵画を価値付けてきた物語は不要になり、自然の姿自体が対象になりうる時代がやってきたのである。

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