ラマルティーヌ「湖」Lamartine « Le Lac » ロマン主義的抒情 

第2−3詩節は湖に対する詩人の呼びかけ。彼女の不在を嘆きながら、思い出として、彼女が存在していた昨年の状況を描き出す。

Ô lac ! l’année à peine a fini sa carrière,
Et près des flots chéris qu’elle devait revoir,
Regarde ! je viens seul m’asseoir sur cette pierre
Où tu la vis s’asseoir !

おお、湖よ。一年がもうじき過ぎようとしている。
この愛しい波を、彼女は再び目にするはずだったのに、
見てくれ。ぼくは一人やってきて、この岩の上に座っている。
ここに彼女が腰を下ろした姿を、お前も見たのに。

「おお、湖よ」Ô lacという呼びかけは、抒情性を高める効果を持ち、「見よ!」Regardeという命令が、感情の高まりをさらに盛り上げる。
昨年は幸福な時を過ごし、今年もまた再会を約束していたのに、彼女の姿はない。私は一人で、孤独に同じ景色を見ている。
そうした内容を、呼びかけや命令形を使い、読者に実感できるように表現している。

その一方、一年前の出来事が、もう遠い昔のことのようにも感じられる。
ラマルティーヌは、その感覚を表現するため、動詞の時制を最大限に活用した。

第1詩行は、l’année a finiと複合過去形。(内容的に言うと、現在完了と言った方が相応しい。)複合過去は、現在において完了したことを示す時制で、avoirの現在形が現在時制に属することを示し、avoir finiが完了を示す。その時制によって、一年が完了したことを示すと同時に、「私」は現在に位置していることがわかる。

第2詩行にあるelle devaitは半過去形。過去における現在を示し、一年前の時間に位置する。つまり、一年前には、彼女がもう一度この岸辺に戻り、この波を見ることになっていた。

第3詩節は、regardeという命令形(現在)と、je viensという現在形。現在に属する。

第4詩節のtu la visは単純過去形。この過去は、語り手の現在と切り離され、歴史のような一般的な過去の事件を示す。
湖に向かって、彼女がここに座るのを見た(tu la vis)と言うとき、一年前の出来事は、詩人の直接の体験であるよりも、歴史や物語ように、遠い過去の出来事として語られるのである。

代名詞の使い方にも注目しよう。
この詩の中では、愛する人は決して名指されず、最初からelleとしか言われない。elleを誰と名指す必要がないほど、彼女が詩人の心の中、頭の中に宿った存在であることが、そのことによって表現されている。

彼女の不在を確認するだけの内容の第2詩節だが、ラ・マルティーヌは時制や代名詞を最大限に活用し、詩的効果を高めている。

Tu mugissais ainsi sous ces roches profondes,
Ainsi tu te brisais sur leurs flancs déchirés,
Ainsi le vent jetait l’écume de tes ondes
Sur ses pieds adorés.

(湖よ)お前は深い岩礁の足元で、こんな風に、声を上げていた。
こんな風に、岩礁の引き裂かれた懐の上に砕けていた。
こんな風に、風が波の泡を投げ掛けていた。
彼女の愛しい足の上に。

動詞は全て半過去。mugissait, brisait, jetait.その時制で表されるのは、過去の状況。
単純過去は、舞台の前景で行われる行動を物語る。半過去は背景となる情景を描く。
第2詩節の最終行(tu (le lac) la vis s’asseoir)で単純過去が使われ、彼女が湖の畔の岩の上に座るのを見るという過去の行動が示された。
第3詩節では、昨年彼女と一緒に湖にいたときの情景が、半過去を使い、絵画のように描き出される。

Ainsiは、第一詩節の最初の言葉。ここではその言葉が3度反復される。ちょうど、打ち寄せる波のように。
永遠に波は岸辺や岩礁に打ち寄せる。こんな風に(ainsi)。

岩礁に関して、二行目でleurs flancs(脇腹、懐)という人間の体の一部を指す単語が使われた。これは湖の人間化して、波の動きを人間の鼓動と重ねるためと考えられる。その湖に、愛する彼女が昨年は足を浸していた。

こうして人間化された空間は、五感を持って捉えられることになる。mugir(声を上げる)は聴覚。se briser(砕ける)は視覚。jeter l’écume (…) sur ses piedsは触覚。従って、第3詩節で描かれる絵画は、客観的な情景描写というだけではなく、読者がその風景を五感を通して感じる、感覚的な側面を持っている。

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