ラマルティーヌ「湖」Lamartine « Le Lac » ロマン主義的抒情 

第6詩節から第9詩節では、愛する人が話を始める。彼女の言葉は、時間に対して呼びかける、抒情的な祈りである。

Julie Charles

« Ô temps ! suspends ton vol, et vous, heures propices !
Suspendez votre cours :
Laissez-nous savourer les rapides délices
Des plus beaux de nos jours !

時よ! 飛び去らないで。そして、お前たち、幸福な時よ!
流れていかないで。
すぐに消え去ってしまう至福を味わわせておいて。
私たちの最も美しい日々を!

第6詩節の動詞は全て命令形(suspends, suspendez, laissez)に置かれ、時間に対する呼びかけが叙情性を帯びている。
「飛び去らないで。」「流れを止めて。」「味わわせておいて。」と呼びかけられた時間。その時間は、vol(飛翔)、cours(流れ)という名詞によって、飛び去り、流れてしまうことが示される。
幸福な時(heures propices, les plus beaux de nos jours)は束の間しか続かない。至福はすぐに(rapide)過ぎ去り、心ゆくまで味わうことはできない。

« Assez de malheureux ici-bas vous implorent,
Coulez, coulez pour eux ;
Prenez avec leurs jours les soins qui les dévorent ;
Oubliez les heureux.

この世に生きる多くの不幸な者たちが、時間に向かって祈りを捧げる、
過ぎ去ってくれ、過ぎ去ってくれと。彼等のために。
彼等の日々と共に、彼等を苦しめる心配を取り去ってあげて。
でも、幸福な者たちのことは忘れて下さい。

第7詩節でも3つの動詞(coulez, prenez, oubliez)は命令形で、時間に向かっての呼びかけが行われる。
最初の3行では、不幸な人間にとっては、時間は過ぎ去って欲しいものであることが示される。
その反対に、最後の一行で、幸福な人間たちは時間の流れから逃れたい、という望みが表現される。

幸福な者たちも時間の流れの中に生きていて、それを止めることはできない。それにもかかわらず、自分たちを忘れて欲しいという不可能な望みを、時間に投げ掛けるのである。

« Mais je demande en vain quelques moments encore,
Le temps m’échappe et fuit ;
Je dis à cette nuit : Sois plus lente ; et l’aurore
Va dissiper la nuit.

だめだとわかっていても、もうしばらくこのままでいたい。
時は私からすり抜け、逃げ去っていく。
私は夜に向かって言うの。もっとゆっくりって。でも、曙が
夜を消していくでしょう。

私たちは夜の中にいる。その間は何も見えず、聞こえず、幸福感に浸されている。しかし、時間は否応なしに流れ、朝がやってくる。

«  Aimons donc, aimons donc ! de l’heure fugitive,
Hâtons-nous, jouissons !
L’homme n’a point de port, le temps n’a point de rive ;
Il coule, et nous passons ! »

だから、愛し合いましょう。だからこそ、愛し合いましょう! この逃げ去っていく時を、
大急ぎで、楽しみましょう!
人間には港がなく、時間には岸辺がありません。
時は流れ、私たちも過ぎ去っていきます!

第9詩節になると、3つの感嘆文(aimons ! jouissons !, passons !)が続き、抒情性が強く打ち出される。

時間は否応なく過ぎ去る。だからこそ、その時間を楽しむという思想は、ルネサンス期にロンサールによって歌われた「愛しい人よ、さあ、バラを見に行こう」のテーマ、「時間の喪失」(la fute du temps)の再現。

しかし、同じテーマでも、時代によって扱いが違い、意味することが違う。
ロンサールは「愛しい人よ、さあ、バラを見に行こう」の中で、Carpe diem(その時をつかめ)という思想を表現した。過去や未来を考えるのではなく、今という時を生きること。今を充実させること。
他方、ラマルティーヌでは、Carpe diemは中心的な主題にならない。過ぎ去った過去を思い出として甦らせる。そこで生まれる喪失感がメランコリーとなり、抒情的な感情を生み出す。
その違いを理解することで、ロマン主義がよりよく理解できるようになる。

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