ラマルティーヌ「湖」Lamartine « Le Lac » ロマン主義的抒情 

第14詩節から3つの詩節に渡り、さらに詠嘆が強まる。
そのために、ラマルティーヌの悲歎が読者に伝わり、私たちも彼の抒情世界に入り込むことになる。

Qu’il soit dans ton repos, qu’il soit dans tes orages,
Beau lac, et dans l’aspect de tes riants coteaux,
Et dans ces noirs sapins, et dans ces rocs sauvages
Qui pendent sur tes eaux.

Qu’il soit dans le zéphyr qui frémit et qui passe,
Dans les bruits de tes bords par tes bords répétés,
Dans l’astre au front d’argent qui blanchit ta surface
De ses molles clartés.

Que le vent qui gémit, le roseau qui soupire,
Que les parfums légers de ton air embaumé,
Que tout ce qu’on entend, l’on voit ou l’on respire,
Tout dise : Ils ont aimé !

お前(湖)が休息しているときも、嵐の時も、
美しい湖よ、気持ちのいい斜面を目にしながら、
暗い樅の木の中でも、湖面に垂れかかっている
荒々しい岩の中でも、

震え、通り過ぎる、西風の中でも、
岸辺から岸辺へと何度も打ちつける波の音の中でも、
お前(湖)の表面を、どんよりとした光で白く染める、
銀色の額をした星の中でも、

うめき声をあげる風、ため息をすく葦、
香の立ち篭めた大気の軽やかな香り、
聞こえ、見え、胸に吸い込むもの、
あらゆるものがこう言ってほしい、「二人は愛し合った!」と。

伝統的なフランス詩法においては、4行で一つの節を形成する詩節で、意味が完結しないといけないという規則があった。さらに一行ごとに文の要素がまとまっていることが原則だった。しかし、ここでは、フレーズは終わらず、12行の詩句が一つの文になっている。
その中で、主語と動詞は、最終行の「あらゆるものがこう言ってほしい」(tout dise)。その前の第14−15詩節では、その条件が示され、第16詩節の3行は「あらゆるもの」(tout)の内容だった。
こうした構文のために、様々な言葉が重ねられながら完結せず、その言葉の畳掛けが、詩人の息せき切った心の鼓動が伝わってくる。実際、qu’il soit, qu’il soit, dans… et dans … de dans…が連続し、「二人は愛し合っていた。」という思い出がかき立てる感情を高めている。

その感覚を味わう最もよい方法は、マリア・カザレスの朗読を聞くことだろう。息せき切った感じがひしひしと伝わってくる。

第14ー15詩節のQue+接続法は、「・・・であろうと」という条件を意味する。
第14詩節では、対立する状態ー静寂と嵐、明と暗、木(生物)と石(無性物)ーが描き出され、どんな状態であろうともという条件だけが示され、文が続く。
第15詩節では、西風、波、星に言及される。前の詩節で言及されたものが現実の自然のいろいろな姿だったのに対して、地上から天上へと詩人の思いは高まっていく。そのために、「美しい湖よ」と呼びかけられた湖は、白い光を通して銀色の星との繋がりが暗示される。
そして、ここでも文は終わらず、渇望の対象が何かわからないまま、その渇望の強度だけが上昇する。

第16詩節の中に出てくるQue+接続法は、命令を意味する。Que tout diseが主語+動詞(接続法)で、全てが言うようにの意。
4詩行目の最初に置かれた全て(tout)という言葉が、風(vent)、葦(roseau)、香り(parfums)、聞こえ、見え、胸に吸い込むもの全てを受けている。

そして、64行に渡って繰り広げられた詩人の思いの最後に、全てのものが言うべき内容が明らかになる。« ils ont aimé.» 彼等は愛し合った。
この複合過去形を、第2詩節の« tu la vis s’asseoir. »の単純過去と比べると、二つの過去時制の違いが、この詩の中で最大限に活かされていることがわかる。
単純過去は、今とは切り離された過去の時点の出来事。
複合過去は、現在の時間の中で、完了した出来事。

従って、« ils ont aimé. »は、今では終わってしまった出来事の思い出ということになる。そのすでに存在していない愛を強く望んだとしても、時間が流れ全てを消し去ってしまう時間の中で、決して戻ってくることはない。
その不可能性がメランコリーを生み出し、決して達することができない理想へを憧れること。それがロマン主事的抒情の源泉である。

第14−16詩節の12行の詩句の高揚感が、読者の感情を高め、詠嘆的な抒情の世界へと導く。

ラマルティーヌの「湖」は、そうしたロマン主義的抒情を最も見事に表現した詩作品だといえる。

フランス語での解説サイト:


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