ランボー「母音」 Rimbaud, « Voyelles » ボードレールを超えて  Au-delà de Baudelaire

3.Eは白

Eの白は、2つの言葉で表現される。« candeur »と« blanc »。
その違いを探ることで、4つの単語が並列し、それぞれの関連が示されない詩句(parataxe)を解読する鍵が見えてくる。

[…]. E, candeurs des vapeurs et des tentes,
Lances des glaciers fiers, rois blancs, frissons d’ombelles ;

(前略)。E、蒸気とテントの無邪気な白、
誇らしげな氷河の槍、白い王、セリの花のおののき。

単なる白(blanc, blancheur)という単語ではなく、« candeur »が使われてることに注目しよう。この単語は、19世紀後半のリトレ辞典によると、精神的な性質で、魂が純粋で邪気のないという意味。しかし、語源的に見るとラテン語の« candor »(輝くような白さ)に由来する。従って、その言葉を使うことで、単なる白という色だけではなく、精神的な意味を込めていることがわかる。

誇らしげな(fier)も精神的な意味が強くある。物を修飾する場合には比喩的な表現になり、ここでは氷河(glacier)を擬人化するともいえる。

セリの花の「おののき」(frisson)も、単に揺れるという以上に、感情や感覚を伴った揺れのことで、花を物質的な次元から精神的な次元に移行させる働きをしている。

このように見るとき、白い王という表現が、それ以外の表現と反対の方向を向いていることがわかる。« candeur »が白くかつ純粋だとすると、« blanc »は白だけで、精神的な次元が欠けている。そして、その形容詞だけが人間と関係付けられている。その結果、王様たちは白く、非人間化される。

言葉の表現を見ていくと、« candeurs »の« eur »は« vapeur »に引き継がれるだけで煙のように消えてしまう。それに対して、鼻母音« an »の方は« blanc »に含まれ、二つの白をつなぐ。
さらに、« tente », « lance »にも含まれ、母音反復(assonance)を形成する。さらに、« c »が« lance », « glacier », « blanc »の中に含まれる(allitération)。
このように、« candeur »を形成する音と文字が、2行の詩句を支配していることがわかる。

ところが、« blanc »が出てくる2行目では、« l »の音がより重要性を増し、« lance », « glacier »、« ombelle »と、全部で4度反復される(allitération)。そのことによって、重心が精神的な次元の白さから、単なる色彩としての白さに移行することが暗示されている。
最後に置かれたセリの花« omelle »は、次の詩句で韻を踏む« belle »と響き合い、白い美しい花を読者の目の前に咲かせる。
その時、おののき(frisson)は比喩的な意味になり、目に見える揺れ、つまり物理的な動きとなり、精神的な次元は後退する。

こうした姿勢は、ランボーが攻撃の対象とした高踏派(パルナス派)の詩の姿勢だといえる。
パルナス派は完璧な形式美もつ詩を目指し、ロマン派的な感情の横溢を抑制した。高踏派の代表であるテオドール・ド・バンヴィルに向けた詩「花に関して詩人に言われること。」でも、ランボーは高踏派詩人を「白い狩人」(blanc chasseur)と呼び、彼等の花(詩)を批判した。彼等は無感動、無感覚な「白い王たち」なのだ。

このように読み説くとき、Eの詩句は、高踏派の詩に対する批判であることがわかってくる。

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