フロベール 『ボヴァリー夫人』冒頭 その3 Flaubert, Madame Bovary, incipit, 3/3

「シャルボヴァリ」が発せされた後、クラス中が大騒ぎになる。
まだもごもごしているために、シャルル・ボヴァリーと名字と名前が分けられるのではなく、二つが一つのようで、名字なのか名前なのかわからない。大爆笑が起こるのも無理はない。

Ce fut un vacarme qui s’élança d’un bond, monta en crescendo, avec des éclats de voix aigus (on hurlait, on aboyait, on trépignait, on répétait : Charbovari ! Charbovari !), puis qui roula en notes isolées, se calmant à grand’peine, et parfois qui reprenait tout à coup sur la ligne d’un banc où saillissait encore çà et là, comme un pétard mal éteint, quelque rire étouffé.

大音響が一気に轟き、大きくなり、金切り声の笑いが炸裂した。(みんな叫び、吠え、足を踏みならし、「シャルボヴァリ! シャルボヴァリ!」と繰り返した。)その後からは、あちこちで声がばらばらにするようになったが、なかなか静まらなかった。時には長い机の一つの列で笑い出すこともあった。まだあちこちで、消え残った爆竹のように、押し殺した笑いが飛び出すのだった。

この長い文章は、最初の「それは大音響だった。(Ce fut un vacarme)」という単純な構文で成り立っている。
その後、関係代名詞« qui »が3つ続き、大爆笑が徐々に変化していく様子が、見事に表現されている。

その際、マルセル・プルーストがフロベールの文体の特徴としてあげた動詞の活用(単純過去、半過去、現在分詞)がここでも見事に使い分けられ、動きと状態が描き出されている。

そのことで、主語の大音響に動きが与えられ、生き物のように感じられる。クラス全体が生き生きと活動し、シャルルを取り囲む。
彼は、爆音を上げて前に進んで行く近代社会に取り囲まれ、逃げることもできず、そこに取り残される個人の代表なのだ。

作者フロベールが、物語の中に直接介入する姿を見せることはほとんどない。しかし、作品の中に描き出されたそれぞれのシーンからは、彼の社会に対する眼差しを読み取ることが出来る。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中