ネルヴァル 「ファンテジー」 Nerval « Fantaisie » 音楽と絵画とデジャ・ヴュと

詩人は、古びたメロディーを耳にする度に、魂が200年若返るという。
この詩が書かれたのは1832年。200年遡ると、1630年。ルイ13世の治世下。

Or, chaque fois que je viens à l’entendre,
De deux cents ans mon âme rajeunit :
C’est sous Louis treize… Et je crois voir s’étendre
Un coteau vert que le couchant jaunit,

そのメロディーを聞く度に
二百年、私の魂が若返る。
それはルイ十三世の時代だった。。。目の前に広がるように思える、
緑色の小さな丘が。夕日が黄色く染めている。

一つの曲に触れ、過去の記憶が一気に甦るシステムは、プルーストのマドレーヌと同じである。
「ファンテジー」の特色は、これが個人の人生を超えた、200年前の記憶であることだろう。それは個人を超えたというよりも、輪廻転生のような生まれ変わりを前提としている。
200年の間に彼は何度か生まれ変わり、その度に、緑の丘が夕日に染まる風景を繰り返し見てきたに違いない。

プルーストはネルヴァルを最大限に評価し、『失われた時を求めて』の原理となる「無意識的記憶の喚起」あるいは「心の間歇(Intermittences du cœur)」をネルヴァルの作品の中に発見している。
その本質は、プルーストのよれば、イメージ相互間、思考相互間の、何にもまして重要な関係を正しく捉えることにある。

一般的には関係がないと思われるものや、別々に存在していると思われるものの間にある親密な関係に気づくこと。
例えば、ネルヴァルの「蝶」という小詩には、次のような詩句がある。

Le Papillon ! fleur sans tige,
   Qui voltige, (…)

ちょうちょ、枝のない花、
   ひらひらと空を舞う。(。。。)

昆虫と植物は同一化できない。しかし、詩人の感性は、蝶がひらひらと舞う姿を見て、花を思う。二つの別の存在の類縁関係を直感したのだ。
この場合は、目に見える二つの存在、蝶と花が隣接しているといえ、換喩的関係と考えられる。

それに対して、無意識的記憶の喚起は、不在の過去と存在する今を関係づけるので、隠喩的である。
突然記憶の中にかつての光景が甦り、今との特別な関係を明かす。そのことで、個別の存在が、実は別の生と重なり合い、豊かな響きを立てていることに人は気づく。

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