風の谷のナウシカ 交感する力

ナウシカは何をしているのか?

ナウシカは物語の中心でいつも動き回っている。しかし、彼女が何をしているのか考えてみると、答えは結構難しい。
ナウシカの行動は、起こった出来事に対してのリアクションであることが多い。そのために、彼女自身でも何を目指しているのかよくわかっていないと思われることがよくある。

最初、彼女はユパを虫の攻撃から救うことに成功する。その一方で、ペジテの娘ラステルと父のジルの命を救うことはできない。
こうしたエピソードからわかることがある。
ナウシカは、虫たちとは親和性があり、ユパはそのおかげで命を保つ。
その一方で、トルメキア軍の兵士たちとは激しく戦い、何人もの人間を殺してしまう。その上、どんなに戦っても、大切な人の命を守ることはできない。

しかし、戦うナウシカが、ある時点で劇的に変化する。

兵士たちとの戦いの中で、ユパに剣を収めるように諭されるえが、そのまま戦いを続け、ユパの腕を刺してしまう。
その時から、彼女は戦いをやめ、制止する側に回るようなる。

「もう誰も殺したくないのに。」

この言葉が、彼女の全ての行動の原理となる。

この言葉は、実は、子どものころ、小さなオウムをかくまっていて、大人たちに見つかったとき、泣きながら言った言葉と対応している。

「お願い、殺さないで!」

では、「もう殺したくない。」と言った後からの、ナウシカは何をするのか。
ペジテの攻撃を受けたトルメキアの船団からクシャナを救う。
虫に襲われたアスベルをやっとのことで助ける。
このように、彼女は、戦うのではなく、逃走するようになる。

宮崎監督は、主人公の最初の設定を次の様に考えていたという。

経験不足でおぼつかず、まだまだ父親に代わる任には耐えられない娘が、一国の運命と多くの人間に対する責任を否応なく背負わなければならない。
その責任の重さにひしがれながら生きている主人公というのが、初めて僕の中に生まれたんです。(。。。)
ナウシカという主人公の最大の特徴は、何よりも責任を負っているということです。自分の思いとか、やりたいことがあったとしても、とにかくまずその前に、
たとえ小さな部族とはいえ、部族全体の利害や運命をいつも念頭に置いて行動しなければならないという抑圧の中で生きているわけです。

アニメの中で彼女の運命は、「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。」という伝説によって予見され、最後にはそれが実現する。

風の谷に向かうオームたちの突進をとめるためにナウシカは身を投げ出し、死を迎える。
しかしその後すぐに、金色に輝く虫たちの触覚が金の野のように広がり、青い服のナウシカが生き返る。
彼女は虫たちと交感し、そのことで風の谷を救い、伝説の予言を実現することができる。

このように考えたとき、背負いきれない責任を果たすことができたのは、能動的な行動によるのではなく、「交感する力」によると考えてもいいだろう。
だからこそ、毒と共に生きる風の谷の人々の救世主になることができたのだ。

ナウシカは、自分から積極的に目的を遂げるために何かをする少女ではなく、外界と親和性を持ち、調和を生み出そうとする存在だといえる。
この特色が、アニメ全体の思想を巧みに象徴している。

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