名詞の単数と複数

日本語の文脈依存性と読者の役割

日本語には単数と複数の区別がないと言われる。
例えば、「古池や 蛙飛び込む 水の音」
カエルが何匹なのかわからない。

他方、英語やフランス語では、単数と複数は必ず区別される。
芭蕉の句を英語やフランス語に翻訳する場合も、蛙の数を指定することは避けられない。

Old pond / frogs jumped in / sound of water.
(小泉八雲=ラフカディオ・ハーン訳 )

The ancient pond / A frog leaps in / The sound of the water.
(ドナルド・キーン訳)

ラフカディオ・ハーンはfrogsと複数にし、ドナルド・キーンはa frogと単数にしている。

フランス語でも、複数と単数の例がある。

Vénérable étang ! / Les rainettes plongent, / Ô le bruit de l’eau… 
(Christian Faure訳)

Dans le vieil étang / Une grenouille saute / Un ploc dans l’eau !  
(G. Renondeau訳)

以上の例が示しているように、日本語では、単数と複数を明示しない傾向にあり、その区別は文脈に依存している。
そして、文脈を読み取り、単数か複数かを判断するのは、読者の役割。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」
この句の蛙を単数と見なすか、複数と見なすか。
その判断は読者に委ねられ、読者は芭蕉に試されているとも言える。

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