マラルメ 現れ Mallarmé Apparition 悲しみの香りから香り豊かな星々の白いブーケへ

Ma songerie aimant // à me martyriser
S’enivrait savamment // du parfum de tristesse
Que même sans regret // et sans déboire / laisse
La cueillaison d’un Rêve // au cœur qui l’a cueilli.

私の夢想は、好んで自らを殉教者のように苦しめ、
賢く、酔いしれていた、悲しみの香りに。
後悔さえなく、失望もなく、その香りを残すのは
「夢」を収穫する季節、それを摘み取った心の中に。

夢想の中で、香り(parfum)に酔いしれる(s’enivrer)。
そこに詩的美の効果を求めるのは、きわめてボードレール的。
しかも、その時、マラルメは、自らを殉教者のように苦しめ(se martyriser)、悲しみの香り(parfum de tristesse)に酔う。

Michel-Ange, Pêché d’Adam et Eve et la sortie du Paradis.

その香りは、「夢の収穫の季節(cueillaison d’un Rêve)」によってもたらされる。
Rêveの最初が大文字になっているのは、夢が一つの固有名詞と見なされていることを示す。

その「夢」とは、「あたなの最初の口づけ」を得ることだろう。
その実現の日は、祝福の日かもしれない。
しかし、それは、楽園のアダムとエバが「善悪を知る木(arbre de la connaissance du bien et du mal )」から実をもいで口にした時でもある。
最初の人間は、知恵を得たために、楽園から追放された。

だからこそ、香りに酔う私は、我を忘れて熱狂するのではなく、賢く(savamment)酔う。
夢を収穫した心には、後悔(regret)も失望(déboire)もない。

このように、たとえ夢想の中であろうと「夢」を収穫した者は、悲しみの香りに酔いながら、楽園を追放され、彷徨わなければならない。
それが殉教者(martyre)の運命なのだ。

J’errais donc, / l’œil rivé // sur le pavé vieilli
Quand avec du soleil // aux cheveux, / dans la rue
Et dans le soir, / tu m’es // en riant / apparue
Et j’ai cru voir la fée // au chapeau de clarté
Qui jadis / sur mes beaux // sommeils / d’enfant gâté
Passait, / laissant toujours // de ses mains mal fermées
Neiger de blancs bouquets // d’étoiles parfumées.

だから、私は彷徨っていた、古びた舗石に目を釘付けにして。
その時、髪には日の光が降り注ぎ、通りの中、
夕暮れ時に、あなたが、微笑みながら、私の前に現れた。
私は、光の帽子を被る妖精を見たように思った。
かつて、甘やかされた子供の美しい夢の上を、
通り過ぎていった妖精。彼女のしっかりと握られていない手からは、いつも、
雪のように降るかかっていた、香り豊かな星々の白い花束が。

私は彷徨っていた(j’errais)という言葉は、楽園追放が前提になっている。
その時、目は古い舗石(pavé vieilli)に注がれているが、古びた(vieiili)は、前の行の収穫した(cueilli)と韻を踏み、収穫が世界の衰退の原因であることを暗示している。

次いで、逆転が突如として起こる。
愛する人が私の前に姿を現す(tu m’es (…) apparue)のだ。
この出現が、詩の題名の「現れ(apparition)」にほかならない。

どこにでもある道(dans la rue)を通り過ぎていく「あなた」。
夕暮れ時(dans le soir)にもかかわらず、その髪には太陽(soleil aux cheveux)が降り注いでいる。あるいは、太陽のような金髪。
そして、微笑みを浮かべている(en riant)。
その詩句の中で、riantはri / antと分離され(dièrèse)、2音節に数えられる。
さらに、その詩行の後ろのエミスティッシュ(6音節)の中で、3/3のリズムに区切られ、riant(笑う)にアクセントが置かれていることがわかる。

そのようにして、太陽に出現とともに、微笑みが詩のイメージの中心を占めるようになる。

そして、最後の4つの詩行では、韻は全て[ e ]となり、一つのまとまりとして提示される。
最初の[ e ]の綴り字は éで終わり、男性韻:clarté, gâté.
後の綴り字は éesと書かれ、女性韻 :fermées, parfumées
微妙なヴァリエーションが加えられている。

では、そこで何が語られるのか。
「あなた」と呼びかけられる存在は、妖精(fée)のように見え、光の帽子(chapeau de clarté)を被っている。
私は、かつて(jadis)、まだ甘やかされた子供(enfant gâté)の頃、美しい眠り夢(beaux sommeils)の中を、彼女が通り過ぎる(passait)のを見たことがあった。
しかも、その時には、彼女の手から、香りのいい星々(étoiles parfumées)の白いブーケ(blancs bouquets)が、雪が降るように(neiger)、流れ落ちていた。

楽園からの追放は、対立する要素を浮かび上がらせ、神秘的な逆転を可能にする。
月 vs 太陽
悲しみ vs 微笑み
涙にくれる熾天使 vs 光の帽子をかぶった妖精
蒼い花弁、(白いすすり泣き)vs 白いブーケ
悲しみの香りvs 香りのいい星々

こうした要素の逆転を可能にするのが、「夢」を収穫することであり、あなたの最初の口づけを夢見、それを得ること。
それによって楽園を追放されるが、その失楽園が、思い出の中の妖精と再び巡り合わせてくれる。
自分を殉教者のように苦しめることは、悲しみを引き起こす。しかし、あなたを出現させてくれる契機でもある。

マラルメは、悲しみの錬金術とも呼べる詩句を駆使し、« la lune s’attristait »から、« Neiger de blancs bouquets d’étoiles parfumées »という美しい詩句を導き出した。
「現れ」は、その過程を見事に描き出している。

最後に、ドビュシーがこの詩に基づいて作曲した、素晴らしい曲を聴いてみよう。

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