2021年12月8日に放送されたQuotidienで、宮崎駿監督が引退を撤退し、2023年に新作を発表するという話題が紹介されていた。
Hayao Miyazaki, patron bougon mais génie artistique
ジブリ
児童文学からジブリ・アニメへ

宮崎駿監督がインタヴューの中で何度も答えているように、監督は児童文学の愛読者であり、『本へのとびら ——— 岩波少年文庫を語る 』(岩波新書)という本まで執筆している。
児童文学作品を映画化したこともある。
「魔女の宅急便」は角野栄子の同名の小説を原作にして、主人公のキキが魔女として独り立ちするために知らない町に行き、成長していく姿を描いている。
ジブリ・アニメの中では、「ゲド戦記」「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコの坂から」「思い出のマーニー」等も、児童文学作品を基に制作されている。
そうしたことは、ジブリ・アニメが観客として最初のターゲットにしているのが、子どもであることと関係している。「となりのトトロ」や「崖の上のポニョ」はもちろんのこと、「天空のラピュタ」でさえも監督の意図としては小学校4年生に向けられているという。

そして、読者として想定された子どもたちに向けて送られるメッセージがある。
人と人のつながり、人間と自然のつながり、目に見えないものの大切さ、文明と自然の複雑な関係等、多くのことがアニメを通して伝えられる。
その内容は、子ども用だからという理由で単純化され、すぐに解決策が与えられるものではない。
それだからこそ、アニメを見終わった後、楽しい気分になるだけではなく、ずっと心に残り続ける「何か」がある。
おもひでぽろぽろ 思い出と向き合う

高畑勲が監督した「おもひでぽろぽろ」は、アニメ作品にありがちなファンタジー的な要素がなく、特別な主人公の特別な冒険物語とは正反対の作品。
主人公タエ子は27歳。独身で、東京の会社に勤めている。
物語は、田舎に憧れている彼女が10日間の休暇を取り、農業体験をするために山形の親戚の家に行くところから始まる。
田舎に行くと決めた時から、突然、小学校5年生の思い出がポロポロとこぼれ落ちるように蘇り、彼女の心を一杯にする。
山形では、親戚の家族に混ざって紅花を摘む作業を手伝ったり、有機農業に取り組むトシオに有機農業の手ほどきを受けたり、蔵王にドライブにいったりする。東京に戻る前の日、親戚のおばあさんからトシオの嫁になってくれと突然言われ困惑する。しかし、結局、そのまま東京に戻る電車に乗る。
しかし、電車の中で突然考えを変え、次の駅で電車を降る。そして、トシオが迎えに来た車に乗り、親戚の家に戻る道を辿る。
特別なことが何もなく、ただ一人の女性が田舎で農業体験をし、一人の男性と仲よくなるという物語。
虫めづる姫君 La princesse qui adore les insectes 風の谷のナウシカの祖先?

平安時代後期に成立したと考えられている『堤中納言物語』に「虫めづる姫君」という短編物語が含まれている。
誰もが蝶や花を愛する中で、主人公の姫君は毛虫や気味の悪い昆虫を愛している。そのために、親からも、求婚者となりうる男からも、お付きの侍女たちからも、変な娘とみられている。
しかし、そんなことは一向に気にせず、平安時代の宮廷風俗を一切受け入れない。彼女には彼女の理屈があり、それを曲げようとはしない。

ジブリ・アニメに出てくる風の谷のナウシカは、この虫めづる姫君をモデルの一人にしている。実際、彼女はオウムの子どもを大切にし、誰もが恐れる毒のある花をこっそりと栽培している。
現代のような個性を重視する時代ではなく、社会的な規範がとりわけ重視された時代に、蝶ではなく、毛虫を愛する姫君の物語が、何を主張しているのだろう。
続きを読む風立ちぬ 生きることと美の探究と
「風立ちぬ」は、「紅の豚」の延長線上にあるアニメだといえる。

主人公の堀越二郎は、飛行機の設計技師。彼の友人である本庄は、兵器としての戦闘機を制作し、彼の爆撃機は殺戮兵器として空を飛ぶ。
それに対して、二郎は、「ぼくは美しい飛行機を作りたい。」と言い、実用ではなく、美を追い求める。

そうした対比は、「紅の豚」においては、イタリア軍のエースパイロットであったマルコと、軍を離れ自由に空を飛ぶことの望むポルコの対比として表されていた。
https://bohemegalante.com/2020/03/12/porco-rosso/

そうした類似に基づきながら、「風立ちぬ」では、美にポイントが置かれ、さらに、二郎と菜穂子の恋愛物語が、もう一つの側面を形成している。
その恋愛物語は、堀辰雄の『風立ちぬ』に多くを負いながら、生と死の複雑な関係を通して、生きることの意味を問いかけている。
紅の豚 大人を主人公とした、大人のためのアニメ

「紅の豚」の主人公は、豚の顔をした中年のパイロット。格好良くもないし、英雄でもない。何か特別なことを成し遂げるわけでもない。
そんな作品に関して、宮崎駿監督は、「紅の豚」の演出覚書の中で、「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための、マンガ映画であることを忘れてはならない。」と書いている。
また、「モラトリアム的要素の強い作品」という言葉を使い、大きな流れから一旦身を引き、執行猶予あるいは一時停止の状態にいる人間の状況がテーマであることを暗示する。
そのような状況設定に基づき、「紅の豚」は私たちに、宮崎監督の考える「大人」、そして「人間が個人として生きることの意義」を明かしてくれる。
続きを読むポム いつでも何度でも Pomme Itsudemo nando demo
2020年のVictoire de la Musiqueで Album révélationを受賞したポムPommeは、2018年に日本に旅行して以来、日本が好きになり、日本語を勉強したそうです。
Youtubeには、彼女が日本語で歌う「いつでも何度でも」がアップされています。
ドゥブロヴニク アドリア海の真珠
かぐや姫の物語 自由と自然 Le conte de la Princesse Kaguya liberté et nature

高畑勲監督が2014年に発表した「かぐや姫の物語」は、スタジオジブリの作品としては、まったくヒットしなかった。
同じ年に公開された宮崎駿監督の「風立ちぬ」が810万人(興行収益120億円)だったのに対して、「かぐや姫の物語」は185万人(25億円)だったと言われている。
フランスで公開された時には、芸術性が優れているという点で評価が高く、日本でも一部からは優れたアニメとして認められている。しかし、人気は出なかった。その理由はどこにあるのだろうか。
続きを読む動く線 スタジオ・ジブリ かぐや姫の物語
スタジオ・ジブリの高畑勲監督が制作した「かぐや姫の物語」の映像表現は、「動く線」を最大限に活かした作品。
ディズニー・アニメの現実的な映像とは反対に、手書きの絵の雰囲気を最大限に活かしている。