私たちは好きな歌を何度も聴く。歌詞はすでに知っていて、聞く前から言葉の意味はわかっている。それにもかかわらず、何度聴いても飽きることがない。
その理由はどこにあるのだろう?
ある研究によると、言葉をほとんど話すことができない子どもでも歌を聞いてある程度反復できるが、しかし歌詞だけを取り出すことは難しいという。
歌は、「メロディー」「リズム」「調性」「歌詞」「音色」などの要素から構成される。
実験に参加した2歳の子どもたちは、「メロディー」は上手でなくても「リズム」に乗って「歌詞」を口ずさむけれど、「歌詞」の「言葉」だけを話すように頼むと途端に発音できなくなった。
この実験が教えてくれるは、歌詞の意味がわからなくても、音楽と一緒であれば言葉の音声を記憶できる、ということである。
母語を習得する過程においても、幼児は身近な大人たちの音声を聞き、聞こえた音を反復する。
言語に「表現(文字、音声)」と「内容(意味)」という2つの側面があるとすると、最初に反復の対象になるのは「音」にすぎない。
それが「意味」と繋がるのは、「マンマ」という音の塊が、食べ物と連動することを記憶した時でしかない。
まず「音」があり、次に「意味」が来る。
このようなことを考えると、言語における「音」の重要性がはっきりと理解できる。
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