「子ども用」という言葉は、大変に大きな価値観の転換を含んでいる。子供服や子ども用のおもちゃ、そして子ども用の本。そうしたものは、「子どもが大人とは違う特別な存在である」という感受性を前提にしている。ここではまず、子どもに関する感受性の変化について見ていこう。
子どものイメージ

子供用品があふれている現代から見れば、子どもは大人とは違う特別な扱いをする方が普通である。しかし、かつては、体が小さく、体力がないだけで、後は大人と同じように見られていた時代があったと言われている。
今でも、経済的に発達していない国では、幼い年齢の子どもが労働力の一部として社会の中に組み込まれ、働かされていたりする。それが当たり前だった時代が、かつてはあった。
こうした違いは、子どもをどのように見るかにかかっている。
現代においては、子どもはみんな可愛いと思い、大人になるための発達段階に応じた教育が必要だと考えられている。しかし、こうした考え方はヨーロッパでは16世紀以降に出来上がってきたものであり、フィリップ・アリエスというフランスの学者の言葉を借りれば、子どもは「体の小さな大人」にすぎなかった。子どもだからといって特別に可愛がるという気持ちはなかったのである。