寓話「セミとアリ」 « La Cigale et la Fourmi »  ラ・フォンテーヌ『寓話集』への招待 Invitation aux Fables de la Fontaine

17世紀後半の作家ラ・フォンテーヌは、イソップの寓話をルイ14世が支配する宮廷社会の時代精神に合わせて書き直した。

1668年に出版された彼の『寓話集』は、六つの書に分けられ、それぞれの巻の最初には寓話というジャンルを説明する話が配置されている。
その中でも、「セミとアリ」は、「第一の書」の冒頭に置かれ、『寓話集』全体の扉としての役割を果たしている。

「セミとアリ」は、日本では「アリとキリギリス」という題名で知られている。
夏の間、キリギリスは歌を歌い、働かない。冬になり、夏働いていたアリに食べ物を分けてくれるように頼むが、もらうことができず死んでしまう。
このような話を通して、勤勉に働くことや将来を見通すことの大切さ等が、教訓として読み取られる。

ラ・フォンテーヌは、その物語の骨格に基づきながら、自分風に変えていく。

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ボードレール 夕べの諧調 Baudelaire « Harmonie du soir »

Eugène Boudin, Étude de ciel sur le bassin du commerce

「夕べの諧調」は、ボードレールの韻文詩の中で、最も美しく魅力的な詩の一つ。

一つ一つの言葉、言葉と言葉の繋がりが、音の点でも、意味の点でも、円やかなハーモニー(Harmonie)を奏で、私たちを恍惚とした美の世界へと導いてくれる。

詩の形態は、東南アジアのマレー半島で使用されたパントゥーム(pantoum)。一つの詩節から次の詩節へと、同じ詩句が次々に引き継がれ、戻ってくる。同じものの反復は、めまい、眩暈を惹き起こす。

音と意味の繋がりは、韻によって明確に示される。
女性韻 ige に関連する言葉は、揺れと固定、めまいとその跡を意味する。
男性韻 oirに関連する言葉は、宗教的な雰囲気をかき立てる。

女性韻:tige(枝)、vertige(めまい)、afflige(苦しめる)、se fige(固まる)、vestige(跡)。

男性韻:encensoir(振り香炉)、soir(夕べ)、reposoir(祭壇), noir(黒), ostensoir(聖体顕示台)。

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ボードレール 「通り過ぎた女(ひと)へ」 Baudelaire « À une passante » 儚さと永遠と

「通り過ぎた女(ひと)へ」の中で、詩人は、雑踏の中ですれ違った女性を思い返し、もう二度と会うことはないであろう彼女に向けて呼びかける。

Constantin Guys, Vanité

その女性が象徴するのは、一瞬のうちに通り過ぎる、儚く、束の間の美。一瞬の雷光。

同時に、その美は心の中に刻まれ、決して消えることはない。それは、永遠に留まる神秘的な美。

こうした、一瞬で消え去りながら、同時に永遠に留まるという美の二重性を、ボードレールはモデルニテ(現代性)の美と呼び、その典型をコンスタンタン・ギースの絵画に見出した。

「通り過ぎた女(ひと)へ」は、モデルニテ美学のエンブレムとなる、十四行のソネット。

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ランボー 「おお季節よ、おお城よ」 Rimbaud « Ô saisons ô châteaux… » 永遠から時間の中へ

「おお季節よ、おお城よ」は、『地獄の季節』の中心を占める「錯乱 II 言葉の錬金術」に収録された韻文詩群の最後に置かれた詩。
その直前に位置する「永遠」の後、再び「時間」が動き始める。
そして、ランボーは、「幸福」について思いを巡らせる。

6音節のリフレイン« Ô saisons (3) ô châteaux (3) »に挟まれ、7音節2行で構成される詩節が、幸福の魔力と魅力について、多様な解釈の余地を生み出す言葉となって、連ねられていく。

Ô saisons, ô châteaux !
Quelle âme est sans défauts?

おお、季節よ、おお、城よ!
どんな魂に、欠点がないというのか?

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ネルヴァル 「デルフィカ」 Nerval « Delfica » 再生と待機

ミケランジェロ、デルポイの巫女

「シメール詩篇」に収められたソネット「デルフィカ」は、ネルヴァルの文学技法と思考を知るための、最良の詩だといえる。

技法を一言で言えば、本歌取り。
知を共有する人々であれば誰もが知っている言葉や事柄を取り上げ、それを変形することで、彼自身の言葉を作り出し、彼の思考を表現する。

思考の内容に関しては、再生や回帰。
しかし、再生を歌うとしても、その実現を待つのが、彼の姿勢である。
象徴的に言えば、ネルヴァルは生と死の間にある煉獄(limbes)にいる。

「デルフィカ(Delfica)」に関して言えば、ゲーテの「ミニョンの唄」とヴェルギリウスの『牧歌』第4巻を主な本歌とし、その題名によって、アポロンに仕えるデルポイの巫女(sibylle de Delphes)の神託が詩となっていることを示している。

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ランボー 最も高い塔の歌 Rimbaud « Chanson de la plus haute tour » 

ランボーの『地獄の季節(Une saison en enfer)』の中心には、「錯乱2 言葉の錬金術(Délires II Alchimie du verbe)」という章があり、その後半に「最も高い塔の歌(Chanson de la plus haute tour)」が置かれている。

シャンソン(chanson)という題名が示すように、この詩は、リフレインー詩節ーリフレインー詩節ーリフレインという構成から成り立ち、シャンソンの原形に基づいている。

最も高い塔というのは、詩人が立て籠もる象牙の塔(tour d’ivoire)を思わせ、世界から孤立した場所を連想させる。
実際、『地獄の季節』では、この詩の直前に、次の様な前書きが書き付けられている。

Je finis par trouver sacré le désordre de mon esprit. J’étais oisif, en proie à une lourde fièvre : j’enviais la félicité des bêtes, — les chenilles, qui représentent l’innocence des limbes, les taupes, le sommeil de la virginité !
Mon caractère s’aigrissait. Je disais adieu au monde dans d’espèces de romances :

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ヴェルレーヌ家の家族写真 Des photos intimes rarissimes de Paul Verlaine

ヴェルレーヌ一家の写真アルバムが発見され、2019年11月20日にパリで競売にかかります。
https://www.lefigaro.fr/livres/des-photos-intimes-rarissimes-de-paul-verlaine-bientot-vendues-a-l-encan-20191115

そのアルバムの中に、これまで見つかっていなかったヴェルレーヌの写真が2枚あるそうです。

Les deux photos du poète, «d’une extrême rareté», ont été prises « au cœur des années 1860 tandis que Verlaine s’apprêtait à publier son premier et mythique recueil : Poèmes Saturniens », précise encore le communiqué. Sur ces clichés au ton jauni, on peut voir le jeune poète, imberbe, assis accoudé à une table ou debout, la tête droite et la main glissée dans une poche.