フランス語の詩を読むために

せっかくフランス語を勉強したら、フランス語の詩の美しさを味わいたいと思うのが、自然な流れだろう。
そこで大切になることが、詩法に関する知識。
フランス語の韻文詩は明確な規則に従って作られてきたので、規則を知ることが理解の基礎になる。

1)詩とはどのようなものか ー 音楽性、絵画性
2)韻文の形式 ー 音節数、韻(音節数、男性/女性、韻の連続)
3)音楽性 ー リズム、音色
4)音、リズムと意味の関係

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ネルヴァルの名刺(表面) 「エル・デスディシャド(不幸者)」  Gérard de Nerval « El Desdichado »

ジェラール・ド・ネルヴァルの「エル・デスディシャド(不幸者)」と題されたソネットを最初に公にしたのは、アレクサンドル・デュマだった。
彼は、1853年12月10日付けの「銃士」という新聞の中で、ネルヴァルに関してかなり茶化した紹介文を書いた。

数ヶ月前から精神病院に入っている詩人は、魅力的で立派な男だが、仕事が忙しくなると、想像力が活発に働き過ぎ、理性を追い出してしまう。麻薬を飲んでワープした人たちと同じように、頭の中が夢と幻覚で一杯になり、アラビアンナイトのような空想的で荒唐無稽な物語を語り出す。そして、物語の主人公たちと次々に一体化し、ある時は自分を狂人だと思い、別の時には幻想的な国の案内人だと思い込んだりする。メランコリーがミューズとなり、心を引き裂く詩を綴ることもある。

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クローデルのお地蔵様

ポール・クローデル(1868−1955)は、フランス大使として1921年から27年まで日本に滞在し、日本の文化を深く理解したフランスの作家。
また、彼は敬虔なカトリック教徒でもあり、西洋的な感性と東洋的な感性の出会いを体現している。

そのクローデルの『百扇帖』Cent phrases pour éventailsと題された詩集の中に、お地蔵さまをうたった詩がある。

La nuit
Approche ta joue de ce bouddha de pierre
et ressens combien la journée a été brûlante


頬を石の仏様に近づけてごらん
感じてごらん 今日の日差しがどんなに強かったか

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ルソーの夢想 自然との一体化 Jean-Jacques Rousseau et ses rêveries

ジャン・ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau, 1712-1778)は、最晩年に、『孤独な散歩者の夢想』(Rêveries du promeneur solitaire)という作品を執筆した。それは、自分の生涯を赤裸々に語る『告白』(1782-89)の後に書かれ、過去を振り返りながら、自己の内面の動きを綴ったものだった。

この作品の「第5の散歩」の章では、人々から迫害されたルソーが、スイスのビエンヌ湖(Lac de Bienne)にあるサン・ピエール島(île de Saint-Pierre)に滞在し、湖の畔で夢想にふける場面が描かれている。
そこで彼は、波の音と自分の心臓の鼓動が一つになり、至福の時を体験する。

それは、自己と自然が一体化し忘我に達する瞬間であり、その体験が非常に美しい文章で描かれている。音楽性も大変に優れていて、スイスの湖の畔に座る「私」の心の鼓動と波の動きが重なり合う波長が、文章のリズムによって見事に表現される。

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オルフェウスとイザナキ 妻を求めて地獄に下る二人の夫

地獄下りの物語は様々な神話として残されている。
その中で、オルフェウスとイザナキは、亡くなった妻を求めて地下世界に下るという点で共通している。
その一方で、違いも大きい。

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ヴェルレーヌと音楽 フィリップ・ジャルスキー Verlaine et la musique Philippe Jaloussky

ポール・ヴェルレーヌは、詩における音楽の重要性を強く意識し、「詩法」« Art poétique »の中で、「何よりも先に音楽を」(De la musique avant toute chose)と主張した。
実際、ヴェルレーヌの詩句は、多くの作曲家によって曲を付けられている。

文学を扱うフランスのテレビ番組’ La Grande Librairie’で、カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーが、ジェローム・デュクロのピアノをバックに、「グリーン」(アンドレ・カプレ作曲)を歌い、その後で少しだけではあるが、ヴェルレーヌの詩と音楽について語っている。

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雲雀 万葉集の和歌とトゥルバドゥールの詩を通してみる日仏の美的感性

雲雀が出てくる日本とフランスの詩を比べ、二つの国の感受や思想の違いを垣間見ていこう。

一つは、『万葉集』に収録されている、大伴家持(おおとも の やかもち、718年頃~785年)の句、「うらうらに」。

もう一つは、12世紀南フランスのトゥルバドゥール、ベルナール・ド・ヴァンタドゥールBernard de Ventadour、1145-1195)の「陽の光を浴びて雲雀が」。
トゥルバドゥールとは、ラング・ドックと呼ばれる南フランスの言語を使い、新しい恋愛の概念を生み出した、作曲家・詩人・音楽家。ヴァンタドゥールは、その代表的な詩人の一人である。

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