ベルト・モリゾ 穏やかな画筆を持つ印象派の画家 Berthe Morisot peintre au pinceau de douceur

Berthe Morisot, Jour d’été

印象派の画家たちの中でも、ベルト・モリゾ(1841−1895)の描く絵画は、穏やかで、優しい。
すすり泣きを取り去ったヴェルレーヌの詩の世界という印象がする。

「夏の日」(1879)を前にして、私たちは暑苦しさをまったく感じない。それどころか、夏の日差しでさえも、柔らかく、心地良い。

Edouard Manet, Berthe Morisot au bouquet de violettes

1841年に生まれ、1895年になくなったベルト・モリゾが画家として社会で受け入れられる道は、それほどたやすいものではなかっただろう。意志の強さは人一倍だっただろう。
しかし、彼女の表情に頑なさはなく、世界を見つめる澄み切った目が印象に残る。
エドワード・マネは彼女を数多く描いている。その中の一枚「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」。
彼女の絵画の世界は、この肖像画のように、落ち着きがあり、穏やかな美に満ちている。

続きを読む

ロマン主義絵画 メランコリーの美

19世紀前半の絵画の中には、ロマン主義的な雰囲気を持つ魅力的な作品が数多くある。
日本ではあまり知られていない画家たちの作品を、少し駆け足で見ていこう。

最初は、アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンの「エンデュミオン 月の効果」(1791)。
最初にルーブル美術館を訪れた時、まったく知らなかったこの絵画を見て、しばらく前に立ちつくしたことをよく覚えている。

Anne-Louis Girodet-Trioson, Endymion ou effet de lune
続きを読む

日本的美の形成 室町時代から安土桃山時代

日本的な美には、平安時代に成立した壮麗で装飾的な美(やまと絵)と、室町時代に形作られた簡素な美(漢画)という二系統の美があり、それが室町時代の後期から安土桃山時代、江戸時代の初期にかけて、徐々に融合していった。

二系統の美については、フランスの作家で日本に外交官として滞在したポール・クローデルも、彼の優れた日本文化論の中で指摘している。
https://bohemegalante.com/2019/08/30/paul-claudel-et-la-beaute-japonaise/

やまと絵の装飾性と漢画(水墨画)の構図力を融合させた最初の例は、室町時代の画家、狩野元信の「四季花鳥図」などに見られる。

狩野元信 四季花鳥図
続きを読む

レオナルド・ダ・ヴィンチ モナ・リザの謎 Mystères de La Joconde de Léonard de Vinci

ダ・ヴィンチの「モナリザ」は、世界中で一番有名な絵画といえるだろう。
しかし、ルーブル美術館で本物を見たとしても、なぜこの絵画がそれほど人々を惹きつけるのは、正直なところよくわからない。

絵そのものをじっくりと見つめるだけで美を感じられればいいのだろうけれど、眉がなく、顔と肩から下の身体のバランスが少し変で、手が異常に大きい女性の姿をみて、美しいとすぐに言うことはできない。

謎の微笑みと言われる顔の表情も、微笑んでいるのか、こちらを見つめているのか、はっきりしない。

そうしたわからなさに惹きつけられて、モナ・リザの謎を探ってみよう。

続きを読む

線の表現 Expression en ligne

絵画の中で、線は様々な表現をする。
直線、曲線、折れ曲がった線。それらを使うことで、物の形をしっかりと表したり、スピード感を出したり、ユーモラスな感じを伝えることもできる。

最初に、ラスコーの洞窟の中に描かれた馬の絵を見てみよう。
馬の身体は穏やかな曲線で描き出され、ゆっくりと進んでいく様子を見事に捉えている。

ベルナール・ビュッフェの「サバーバン・コーヒー」に目をやると、直線の表現が街並みを鋭角的に描き出し、スタイリッシュな雰囲気を生み出している。

こうして二つの絵を見比べてみるだけで、線の表現の面白さを感じることができる。

続きを読む

印象派の目 光と色彩

Auguste Renoir, La Balançoire

物に固有の色はない。
印象派の目は、物に光が当たる波長で色彩感覚が変化することを見抜いた。
印象派の画家達の目は光を捉え、彼等の筆は光を描いた。

ルノワールの「ぶらんこ」の中心は、ぶらんこに乗る少女や彼を取り巻く3人の人物ではなく、彼等の服や地面一面に当たる光の形に他ならない。

その光によって、物の色彩も変化する。例えば、後ろを向いた男性の服はブルーと思われるが、光が当たる部分は白に近い。

私たちは物の色を概念的に見ている。例えば、この服はブルー、というように。しかし、実際には、光によって色が変わる。
ルノワールの絵画は、画家の目に見えるままを描いているのだ。

こうした印象派的な目を持つと、世界はこんな風に見えてくる。

続きを読む