バラク・オバマ元大統領は素晴らしく雄弁で、彼の演説に多くの人々が魅了された。
歌手のと共著で『Born in the USA』という本が出版された機会に、彼の雄弁術の秘訣が簡単に分析されている。
言語
日本語の音楽を聴く
音のない言葉を考えることはできない。
声に出して話したり読んだりする時だけではなく、頭の中で何かを考える時にも音があり、それらの音の繋がるリズムを感じている。
日本語を母語とする者にとっては、5/7を基本とするリズムがごく自然に心地よく感じられる。
ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心(しづごころ)なく 花の散るらむ(紀友則)
私の上に 降る雪は/真綿(まわた)のやうで ありました(中原中也)
これらの言葉の魅力は、意味だけではなく、口調の良さによってももたらされている。
言葉たちが音楽を奏で、私たちはその音楽に耳を傾けて、うっとりするといってもいいだろう。
日本語の特色と普段の話題
日本語には面白い特色があるが、その中のあるものは、人間関係に影響を及ぼし、会話の中身そのものに直接かかわっている。
様々な場所で、人の噂話をしたり、芸能人ネタや恋バナで盛り上がり、時間を忘れるほどになる。
仲の良い友だちの間なら、人の悪口もいいネタになったりする。
もちろん、こうした話題はどんな言語でも話されるに違いない。
しかし、日本語には、こうした話題をすることで、ある目的を達しやすくする特色があるらしい。
『私家版 日本語文法』の著者、井上ひさしは、そうした特色を「自分定めと縄張りづくり」「ナカマとヨソモノ」と表現している。
結論を言ってしまえば、私たちがよくする会話は、ナカマ意識の確認と、もう一つ付け加えれば、自己愛の保証、その二つを暗黙の目的としているのではないかと考えられる。
続きを読む外国語学習 過去と完了

英語を勉強し始めた頃、現在完了が出てきて、過去とどう違うのわからなかったという経験はないだろうか。
私たちの自然な感覚からすると、完了したことは過去のことなのだから、現在完了も過去のことに違いないと思う。その結果、二つの違いがよくわからない。
その上、現在完了に関しては、経験・継続・完了の3用法があると説明されるが、過去の概念に関しては何の説明も、用法の解説もない。なぜだろう?
さらに、過去完了(had+pp.)はある程度理解できるが、未来完了(will have+pp.)はわからないという人もいる。
過去未来完了(would have+pp.)になると、最初から理解を諦めてしまう人も多い。
なぜ日本語母語者は、英語やヨーロッパの言語の時制体系をすっと理解できないのだろうか?
(ここでは、説明を簡潔にするため、英語を例に取ることにする。)
外国語学習 日本語とは違う世界観を知る
フランスでフランス人と話してるとき、すぐに答えられない質問をされることがある。
例えば、「神戸に住んでいる。」と言うと、「東京から何キロ離れているのか?」と質問されたりする。
もう一つよく質問されるのは、「最初にフランスに来たのはいつ?」
その際には、10年くらい前とか、曖昧な答えしかいえない。
フランス人に同じ質問をすれば、「神戸と東京間は約500キロ」とか、「最初は2012年。」とか、きっちりした答えが戻ってくる方が普通。
こうした違いは何を意味し、そのことから、どんなことがわかるのだろうか。
続きを読むフランス語の冠詞 les articles du français
フランス語の冠詞は、二つの基準を導入して考えると、理解しやすい。
1)限定する名詞が数えられるか(可算名詞)、数えられないか(不可算名詞)
2)全部を指すのか、一部を指すのか。
数えられる名詞の場合 :定冠詞/不定冠詞
数えられない名詞の場合:(定冠詞)/部分冠詞
全部を指す場合、定冠詞。
部分を出す場合、不定冠詞/部分冠詞。
1)加算名詞 | 2)不可算名詞 | |
全部 | 定冠詞 | (定冠詞) |
一部 | 不定冠詞 | 部分冠詞 |
名詞の単数と複数
夏目漱石『草枕』の訳者と話をしている時、彼女が面白いことを言っていた。
これまでの仏訳では、Oreiller d’herbesと、草を意味するherbeは複数形だった。でも、herbeは単数形でないとおかしい。
実際、出版された彼女の訳では、herbeは単数形になっている。


普通に考えると、名詞の単数と複数はとても単純で、一つなら単数、それ以外は複数。それで何の疑問もないと思い込んでいる。
しかし、英語やフランス語の文を書く時に、単数にするのか複数にするのか迷うことがある。
そこに冠詞の問題がからみ、正解がわからないことが多くある。
名詞の数は、本当に数だけの問題なのだろうか?
フランス語の語順

時間軸に従って次々に単語を並べていくことで、文章が形作られる。
その際、最初に置かれる要素と、後ろに置かれる要素では、役割が違っている。
最初に置かれる要素は、話し手(書き手)と聞き手(読み手)の間で共有されることになる話題を提示する。
これから何を話すかというテーマ。
後ろに置かれるのは、話題の中で焦点となる事柄。伝えたいこと、知りたいことの中心であり、結論。
一般的に、文の前に置かれる要素が旧情報だとすると、文の後ろには新情報を伝える要素が置かれる。
続きを読む動詞と名詞 概念と具体化
文を作る要素の中心は、動詞と名詞。
多くの場合、動詞は活用され、名詞には冠詞などの限定詞が加えられて、文の中で機能を果たす。
では、活用や冠詞などはどのような役割を果たしているのだろうか。
Danserという動詞の原形(活用しない形)は、踊るという意味の概念を示している。
livreという名詞は、本という概念を示している。
概念は一般的な意味であり、現実の事象を表現しているのではない。
実際の事柄に言及する場合には、動詞を活用し、名詞に冠詞などを付けて概念を具体化する必要が出てくる。
続きを読む日本語の主観性
日本語はウチの言葉であり、お互いが同じ共同体にいることを前提としている。
https://bohemegalante.com/2019/04/17/japonais-langue-interieure/
そのことから二つの特色が派生してくる。
1)モノローグ的言語
2)臨場感
池上嘉彦の『日本語と日本語論』の助けを借りて、この二つの点について考えてみることにする。
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