シュルレアリスムは、20世紀前半、文学、絵画、演劇、映画などの分野で展開された芸術運動。日本で最もよく知られているシュルレアリスムの絵画は、サルヴァトール・ダリの「記憶の固執」だろう。

現実にはありえない事物や光景が描かれ、何を意味しているのかわからないが、そこに魅力を感じることもある、というのが、シュルレアリスム絵画の一般的な印象だと思われる。
しかし、絵画に関する書籍やネット上の解説等を見ると、アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』に依拠したシュルレアリスムの定義は一致していても、具体的な絵画表現や、取り上げられる画家がまちまちで、調べれば調べるほどわからなくなってくる。


例えば、ピカソのシュルレアリスム時代とそうでない時代の絵画。両者とも写実的ではないが、何が描かれているかある程度わかるという点では共通している。
では、一方がシュルレアリスム絵画とみなされ、他方はその分類に属さないと考えられるのはなぜか? それほど明確な答えは得られない(と私には思われる)。
20世紀前半の絵画の潮流は多様で、フォビスム、ドイツ表現主義、キュビスム、素朴派、ナビ派、エコール・ド・パリ、未来派、ダダイスム、抽象絵画などが混在し、一人の画家がいくつかの表現様式を使い分けるということもあった。
そうした中で、シュルレアリスム絵画をどのようなものと考えたらいいのか? ここでは、原理的な側面と実際の表現に関して、少しだけ探ってみよう。