ドガ 生命の脈動を捉える「持続」の画家

エドガー・ドガは、オペラ座の踊り子を生き生きと描いた画家として、日本でもよく知られている。
彼の絵画の中のバレリーナたちは、本当に生きているように感じられる。
外から絵を眺めるのではなく、実際に会場に入った気持ちになり、舞台の上で彼女たちが踊る姿をその場で眺めると、息づかいまで聞こえてくる。

じっとしている姿が描かれているとしても、彼女たちの生命の動きが感じられ、自然に彼女たちの気持ちに共感している自分がいるのに気づく。

止まっているはずの絵によって、どうしてこれほどの「動き」が表現されるのだろうか。
その秘密を、ここではデッサンと構図という二つの面から探ってみよう。

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ドガ 「14歳の小さな踊り子」 知る楽しみ 1/2

文学部の大学院生だった頃、文学の研究をして何の意味があるのだろうかと考えたことがあった。
そんなことが頭に浮かぶのはだいたい勉強が行き詰まっている時なので、教師や友人に問いかけたり、色々なジャンルの本を読んだりと、要するに真正面から研究に取り組まない時間を過ごすことになる。
とにかく、そんな風にしている中で、「研究を通して対象とする作品の面白さや価値を人に伝えること」という言葉を誰かに言われ、一つの答えとして納得した覚えがある。

最近、ドガに関する本(アンリ・ロワレット『ドガ 踊り子の画家』)に目を通している時、そんな思い出が急に頭に浮かんできた。
今までドガの絵画を面白いと思ったことがあるけれど、彫刻にはそれほど興味がなかった。しかし、最初のページに置かれた「14歳の小さな踊り子」の写真と、それに付けられたユイスマンスの言葉を見て、彫刻の素晴らしさに心を動かされ、初めて美を感じることができた。

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絵画を見る目のレッスン 2/2

一人の画家でも、キャリアを通して、描くタッチはかなり変化する。画家の気質が絵画の根底を貫いているとすると、時代による様式の変化等に応じて、対象は同じだとしても、絵画が生み出す印象はかなり違うこともある。

以下の二枚の静物画、一方は初期に、他方は後期に描かれたもの。「花」として見るのではなく、「絵具の動き」として見れば、あまりの違いに驚くかもしれない。

画家の名前を忘れ、ただ目の前に展開する絵具の運動として見てみたい。

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ルノワールとドガ Auguste Renoir et Edgar Degas 光の色彩 デッサンと構図

1874年の第一回印象派展に展示された2枚の絵画がある。

フランス絵画に興味を持つ人であれば、一方がルノワール、もう一方がドガであることがすぐに分かるだろう。

この2枚、同じようなところもあり、違うところもある。それらを探ることは、19世紀後半の絵画についてよりよく知るきっかけになる。

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