アベ・プレヴォ 『マノン・レスコー』 新しい時代を予告する女性の誕生

Jean-Honoré Fragonard, La Lettre d’amour

マノン・レスコーの名前は現在もよく知られている。近年の日本では、彼女はファム・ファタル、つまり、抗いがたい魅力で男性を魅了し破滅に陥らせる女性という、類型化した形で紹介されることがよくある。

その一方で、1731年に出版された時の題名が『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』であり、作者アベ・プレヴォの自伝的小説『ある貴族の回想と冒険』の7巻目にあたることはあまり考慮に入れられることがない。

そのために、実際に小説を読んだとしても、18世紀の前半にその作品がどのような意義を持ち、何を表現していたのか、考察されることはあまりない。
読者は、マノンにファム・ファタル、情婦、悪女などのイメージを投げかけ、自分の中にある恋愛観を通して、無意識に潜む性愛的ファンタスムを読み取るといったことが多いようである。
その場合、アベ・プレヴォの小説を読むというよりは、ファム・ファタルという女性像を中心に置き、物語のあらすじを辿り、気にかかる部分やセリフを取り上げ、恋愛のもたらす様々な作用について語ることになる。
マノン・レスコーはファム・ファタルだと思い込んだ瞬間に、そうした危険があることを意識しておいた方がいいだろう。

フランス文学の歴史の中に位置づける場合には、『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』が1731年に出版された作品であることを踏まえ、その時代にこの小説がどのような意味を持ちえたのかを考えていくことになる。

続きを読む