ラシーヌ 『フェードル』 Racine Phèdre 理性と情念の間で 3/3

イポリットは、フェードルの言葉を誤解したふりをして、その場を立ち去ろうとする。

      HIPPOLYTE.

Madame, pardonnez : // j’avoue, en rougissant,
Que j’accusais à tort // un discours innocent.
Ma honte ne peut plus // soutenir votre vue ;
Et je vais…/

      イポリット

奥様、申し訳ございません。告白いたします、赤面しながら。
私は、間違えて、罪のないお言葉を非難してしまいました。
恥ずかしく、もう、あなた様の眼差しを耐えることができません。
私はこれから・・・。

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ラシーヌ 『フェードル』 Racine Phèdre 理性と情念の間で 2/3

第2幕、第5場は、フェードルがイポリットに自分の愛を明かす場面。
義理の親子の関係にあるために、直接愛を告げることはできない。そこで、フェードルは、夫テーセウス(thésée)に対する愛を語りながら、そこにイポリットへの想いを重ね合わせていく。

幸い、パロリック・シェロー演出の上演がyoutubeにアップされている。
そこでは、フェードルの苦しみが激しく、しかも美しく描かれている。
素晴らしい芝居なので、何度見ても飽きることがない。

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ラシーヌ 『フェードル』 Racine Phèdre 理性と情念の間で 1/3

ジャン・ラシーヌ(Jean Racine)の『フェードル(Phèdre)』は、17世紀フランス演劇の最高傑作の一つ。
この上もなく美しいフランス語の詩句によって、理性と情念の葛藤が描き出される。

そこで、『フェードル』を読む場合には、2つの軸からアプローチしたい。
1)17世紀のおける理性(raison)vs 情念(passion)のドラマ。
2)ラシーヌの韻文詩の美。

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