Carpe diem カルペ・ディエム 今を生きる

Rose Pierre de Ronsard

Carpe diem(カルペ・ディエム)とは、ラテン語で、「今日という日(diem)を摘め(carpe)」の意味。
そこから、「今を生きる」とも言われる。

この言葉は、古代ローマの詩人ホラティウスの詩の一節に由来し、二つの意味に解釈されることがある。

(1)今を充実させて生きる。
その意味では、Carpe diemは、「今を生きる」ことを勧める格言と解釈できる。

(2)後先を考えるよりも、今のことだけを考える。
この場合、後先のことを考えず、今さえよければいいといった、短絡的で快楽主義的な考え方の表現として解釈していることになる。

実は、Carpe diemと似た表現がラテン語にある。
collige, virgo, rosas
摘め、乙女よ、バラを。
この詩句で摘むものは、日ではなく、バラの花。

では、美しいバラの花を摘む幸せを手に入れるためには、Carpe diemを、(1)か(2)の、どちらの解釈をする方がいいのだろう。

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フランソワ・ラブレー François Rabelais 『パンタグルエル物語』と『ガルガンチュア物語』教育論と理想世界

フランソワ・ラブレーは16世紀前半を代表する作家というよりも、フランス文学全体を通して最も重要な作家の一人。
残念ながら、16世紀のフランス語は現代のフランス語とかなり違っていて、容易に読むことができない。従って、ラブレーのフランス語のテクストをそのまま読み、解読してしていくことは難しい。

ここでは、ラブレーの教育論と理想世界について、核になる言葉を取り上げて、概要を見ていくことにする。
ポイントになるのは、二つの言葉。
« science sans conscience n’est que ruine de l’âme. »
« Fais ce que voudras.»

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レオナルド・ダ・ヴィンチ モナ・リザの謎 Mystères de La Joconde de Léonard de Vinci

ダ・ヴィンチの「モナリザ」は、世界中で一番有名な絵画といえるだろう。
しかし、ルーブル美術館で本物を見たとしても、なぜこの絵画がそれほど人々を惹きつけるのは、正直なところよくわからない。

絵そのものをじっくりと見つめるだけで美を感じられればいいのだろうけれど、眉がなく、顔と肩から下の身体のバランスが少し変で、手が異常に大きい女性の姿をみて、美しいとすぐに言うことはできない。

謎の微笑みと言われる顔の表情も、微笑んでいるのか、こちらを見つめているのか、はっきりしない。

そうしたわからなさに惹きつけられて、モナ・リザの謎を探ってみよう。

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ヴィクトル・ユゴー 「影の口が言ったこと」 Victor Hugo « Ce que dit la bouche d’ombre » 自然の中の人間

ヴィクトル・ユゴーは降霊術に凝っていて、回るテーブルを囲み、霊とモールス信号のような交信をしていたことが知られている。
「影の口が言ったこと」 の影の口(la bouche d’ombre)というのは、その霊の口だろう。
ユゴー自身のイメージでは、ドルメンなのかもしれない。彼が描いた絵が残っている。

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ピエール・ド・ロンサールのシャンソン ルネサンス期の音楽

16世紀のプレイアッド詩派の詩はしばしばメロディーをつけて歌われた。

ピエール・ド・ロンサールの「女性を飾る自然」« Nature ornant la dame »。
ポリフォーニーで歌われている。

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パレストリーナ Palestrina ルネサンス音楽の美

ルネサンス期の音楽は、破綻がなく、調和がとれ、耳に心地よく響く。その中でも、パレストリーナ(Giovanni Pierluigi da Palestrina)の曲は、絵画でいえば、ラファエロの母子像を思わせる美しさを持っている。

このラファエルの1枚を見ながら、「キリエ」を聞いてみよう。

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ルネサンスの音楽 ギヨーム・デュファイ 「若々しいバラの花」 Nuper rosarum flores

ルネサンスの芸術の根本は調和(ハーモニー)にある。そのため、音楽にしても、建築にしても、絵画にしても、均整が取れ、五感に気持ちがいい。

ギヨーム・デュファイ(Guillaume Dufay)のモテトゥス「若々しいバラの花」(Nuper rosarum flores)は、1436年、フィレンツェにあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の献堂式の時に演奏された。

デュファイの曲を聞きながら、大聖堂の写真を見ていると、訪れた時の感覚がふと蘇ってくる。

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ロンサール 「愛しい人よ、さあ、バラを見に行こう」Ronsard « Mignonne, allons voir si la rose » 今をつかめ Carpe Diem

16世紀を代表する詩人ピエール・ド・ロンサールの詩「愛しい人よ、さあ、バラを見に行こう。」« Mignonne, allons voir si la rose »は、フランス詩の中で最も有名なものの一つ。

その恋愛詩のベースになるのは、「時間が過ぎ去り、戻ってこないこと」というテーマである。そして、過ぎゆく「今」という時を捉えよという、Carpe Diem(今をつかめ)の思想が美しく表現されている。

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