
『叡智(Sagesse)』2部の最後に置かれた「その4 神が私に言われた(Mon Dieu m’a dit)」は9つの詩篇に分かれ、罪人(pécheur)である「私(je)」と神(Dieu)の間で交わされる対話によって構成されている。
「私」は、五感の官能に恍惚とする人間であり、神を愛することに値する人間ではない(indigne)と自覚し、神を愛することに恐れを感じ、ためらう。
他方、神は、「私(神)を愛せ(Il faut m’aimer)」と諭し続ける。そして、「私(Je)」が教会でミサを受け、心の平穏を味わうことが可能だと告げる。
その神の言葉を受けて、「私」は「ああ! 主よ、私はどうしたのでしょう? 」に至り、一見矛盾する心情を吐露することになる。
VIII
Ah ! Seigneur, qu’ai-je ? Hélas ! me voici tout en larmes
D’une joie extraordinaire: votre voix
Me fait comme du bien et du mal à la fois,
Et le mal et le bien, tout a les mêmes charmes.
八
ああ! 主よ、私はどうしたのでしょう? ああ! 私は涙にくれています、
尋常ではない喜びの涙に。あなたの御声が、
私に、善きことでもあり悪しきことでもあるようなことを、なしてくださいます。
悪と善と、全ては同じ魅力を持っています。