映画の倫理と時代の倫理 終戦直後の小津安二郎作品

私たちは特別意識しないままに、今生きている時代、今生きている場所に流通する倫理観を持っている。そして、その倫理観に基づいて、物事を判断し、自分の行動を決定したりする。

そうした時代性、地域性を意識しないと、自分の持っている倫理観が、全ての時代、全ての人間に共通していると思い込む可能性がある。
また、意識したとしても、別の倫理観を受け入れられないこともある。

古い映画を見るとき、共感できることもあれば、感情的に反発することもある。それは、映画の中で描かれた社会の倫理観と自分の持つ倫理観と関係している。
映画は、映像と音声によって作られる擬似的な世界。観客はフィルムが続く間、その世界を体感する。つまり、現実の世界と類似した経験をするのであり、必然的に倫理観も同様に働く。

映画としての価値とは別の次元で、倫理観や価値判断が働き、好きな映画、受け入れられない映画の違いが出てくる。
そうしたことを、小津安二郎監督が終戦後に制作した「長屋紳士録」から「東京物語」までの6本の映画を通して考えてみよう。

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