ボードレールの美学 想像力と現前性

シャルル・ボードレール曰く、
「美は常に奇妙なもの」。Le Beau est toujours bizarre.
「美は常に人を驚かせるもの」。Le Beau est toujours étonnant.

奇矯なものというのは、1855年の万国博覧会での美術展の批評での表現。
驚かせるというのは、1859年のサロンの美術批評の中で使われた言葉。

こうした美意識を持ったボードレールの美学とは、どのようなものなのだろうか?

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ボードレール 「旅」 Baudelaire « Le Voyage » 新しい詩への旅立ち その3

第3部には、驚くべき旅行者と私たちという二つの系列の旅行者が現れる。その区別は、すでに旅をした人々と、これから旅を志す人間(私たち)の違いである。

III

Etonnants voyageurs ! quelles nobles histoires
Nous lisons dans vos yeux profonds comme les mers !
Montrez-nous les écrins de vos riches mémoires,
Ces bijoux merveilleux, faits d’astres et d’éthers.

驚くべき旅人たちよ! どんなに高貴な物語を、
私たちは君たちの目の中に読み取ることだろう。海のように深い目の中に!
見せてくれ、君たちの豊かな記憶の宝石箱を、
星と天空のエーテルでできた、素晴らしい宝石を。

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ヴェルレーヌ 「秋の歌」 Verlaine « Chanson d’automne » 物憂い悲しみ

日本におけるヴェルレーヌのイメージは、上田敏による「落葉」の翻訳によって決定付けられているといってもいいだろう。その翻訳は、上田敏作の詩と言っていいほどの出来栄えを示している。

秋の日の/ヰ゛オロンの/ためいきの/身にしみて/ひたぶるに/うら悲し。
鐘のおとに/胸ふたぎ/色かへて/涙ぐむ/過ぎし日の/おもひでや。
げにわれは/うらぶれて/ここかしこ/さだめなく/とび散らふ/落葉かな。

この翻訳の素晴らしさが、日本における「秋の歌」の人気の秘密であることは間違いない。しかしそれと同時に、ヴェルレーヌの詩が、『古今和歌集』の詠人知らずの和歌のように、「もののあわれ」を感じさせることも、人気の理由の一つではないだろうか。

秋風に  あへず散りぬる  もみぢ葉の  ゆくへさだめぬ  我ぞかなしき 

フランス語を少しでもかじったことがあると、これほど素晴らしい詩がフランス語ではどうなっているのだろうと興味を持つことだろう。
もちろん、ヴェルレーヌの詩も素晴らしい。

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These foolish things (remind me of you) 思い出のたね 

These foolish things (remaind me fo yo) は、1935年にロンドンで上演されたミュージカル”Spread It Abroad”の挿入歌。
他の人から見たらどうでもいいものでも、自分にとっては大切な思い出、ということはよくある。
題名にfoolishとあるのがとても効いている。だいたい自分のこだわりなんて、foolishなものだ。

エラ・フィッツジェラルドがオスカー・ピーターソンのピアノをバックに歌うものは、しっとりしていて、一人で静かに物思いに浸る感じが心地いい。

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