ボードレール 「旅」 Baudelaire « Le Voyage » 新しい詩への旅立ち その7(最終)

Odile Redon, l’Ange des Certitudes et un regard intérrogateur

「旅」の最後に、詩人は「出航しよう!」と呼びかける。つまり、彼はまだ旅立ってはいず、『悪の華』第二版(1861年)の読者である仲間たちを、新たな詩を発見する旅に誘うのである。

VIII

Ô Mort, vieux capitaine, il est temps ! levons l’ancre !
Ce pays nous ennuie, ô Mort ! Appareillons !
Si le ciel et la mer sont noirs comme de l’encre,
Nos cœurs que tu connais sont remplis de rayons !

おお、死よ、年老いた船長よ、時が来た! 錨を上げよう!
この国は退屈だ、おお死よ! 出港しよう!
空も海も真っ黒い、墨のように。
しかし、お前の知る私たちの心は、光に満たされている!

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ボードレール 「旅」 Baudelaire « Le Voyage » 新しい詩への旅立ち その4

第4部では、驚くべき旅行者たちが航海で見た光景が次々に語られていく。

IV
« Nous avons vu des astres
Et des flots ; nous avons vu des sables aussi ;
Et, malgré bien des chocs et d’imprévus désastres,
Nous nous sommes souvent ennuyés, comme ici.

                「私たちは見た、星を、
波を。私たちは見た、砂も。
数多くの衝突と予見できない災難に出会ったのに、
私たちは何度も退屈した。ここでと同じように。

現実は退屈だ。だから、幻影的な国や輝く楽園を目指して旅立つ。
従って、星や波や砂に出会う素晴らしい旅であり、予期しないアクシデントがある旅だとしても、退屈する。

Gustave Courbet, Le Bord de mer à Palavas ou L’Artiste devant la mer
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ボードレール 「旅」 Baudelaire « Le Voyage » 新しい詩への旅立ち その2

第二部では、目的のない旅が、現実と理想の狭間にあり、深淵に呑み込まれる危険を含んだものであることが示される。

II

Nous imitons, horreur ! la toupie et la boule
Dans leur valse et leurs bonds ; même dans nos sommeils
La Curiosité nous tourmente et nous roule,
Comme un Ange cruel qui fouette des soleils.

Fernand Léger, Composition à la toupie

私たちは模倣する、なんと恐ろしいことか! 独楽や鞠が
ワルツを踊り、飛び跳ねるのを。夢の中でさえ、
「好奇心」が私たちを苦しめ、転がす、
残酷な天使が、太陽たちをむち打つように。

どこといって向かう先があるわけではなく、ただ出発することだけが目的であるとき、旅はたとえ先に進むように見えても、同じ輪の中を回転しているだけになる。独楽や鞠がその場で回転し、跳ねているように。

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ネルヴァルの名刺(裏面) 「アルテミス」  Gérard de Nerval « Artémis »

アレクサンドル・デュマに渡した名刺の裏面に書き付けられた「アルテミス」では、オルフェウスによって暗示された神秘に関する、ネルヴァル的開示がなされる。
(名刺の表面に書かれた「エル・デスディチャド」を参照)
https://bohemegalante.com/2019/05/12/el-desdichado-carte-de-visite-nerval-endroit/

Apollon et Artémis

アルテミスは、ローマ神話ではダイアナと同一視され、狩りと月の処女神であるが、ギリシア神話の中では、ゼウスとレートーと間に生まれた子どもで、アポロンの双生児とされている。

名刺の表側の「私」がフェビュス(アポロン)であるならば、裏面にアルテミスの名前があることに驚きはない。

しかし、詩の内容は、ギリシア・ローマ神話とはかなり異質であり、謎めいている。「アルテミス」では、オルフェウス的詩人の神秘に関して、なぞなぞのようなゲーム感覚で詩句が展開する。

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