平安時代の美は、京都の貴族文化の中で熟成した、総合芸術として確立していった。その様子を最も見事に表現しているものの一つが、平安時代末期に作成された「源氏物語絵巻」である。
「源氏物語絵巻」は当時の宮廷社会の様子を『源氏物語』のエピソードに則り美しく描き出しながら、『古今和歌集』の仮名序で紀貫之が言葉にした「生きとし生けるもの」の「言の葉」が、平安的美意識の根源にあることを示している。
言い換えれば、人間は自然の中で動物や植物と同じように現実に密着して生き、四季の移り変わりに心を託して歌い、描き、生きる。そして、そこに美を感じる。
まず、「宿木 三」を復元された絵で見てみよう。
