
中原中也は耳の詩人であり、彼の詩は声に出して読んでみると、歌を歌う時と同じような心地よさがある。
彼は子供の頃、和歌を数多く読み、地元山口県の新聞に投稿などしていた。
詩人になってからも、5音と7音の詩句を使い、日本人の体に染みついている和歌や俳句のリズムを活かし、詩に音楽性を与えていった。
詩句に音楽を。
フランスの詩人ヴェルレーヌが掲げた詩法を、中也は日本の伝統的な歌=和歌の音節数を持つ詩句で実現したといってもいいだろう。
しかし、それだけではなく、中也の詩は、子守歌の歌心と音楽性を取り入れ、赤ん坊を揺するように読者の心を揺すり、ノルタルジーとメランコリーの中にまどろませる。
その具体的な例として、佐々木幹郎は『中原中也』(ちくま学芸文庫)の中で、「六月の雨」と「ねんねんころりよ おころりよ」を取り上げている。