フランス的優美さの誕生 16世紀ルネサンスの絵画

フランスでは、16世紀にイタリア・ルネサンスの文化の影響の下でフランス・ルネサンスが花開き、絵画においては初めてフランス的と呼べる美が誕生した。
その美しさを一言で言えば、優雅な美。
それが、後の時代のフランス的な美の原型ともいえる。

イタリア文化の伝播に関しては、1516年にフランソワ1世に招かれてフランスにやってきたレオナルド・ダ・ヴィンチが、1519年に亡くなるまでの3年間をアンボワーズにあるクロ・リュセ城で過ごしたことが象徴的な出来事だといえる。
また、実際の影響としては、フォンテーヌブロー城で活躍した画家たち、例えば、ロッソ・フィオレンティーノがより大きな役割を果たした。

ダヴィンチのモナリザやロッソの描いたニンフの姿を見ると、16世紀のフランスの絵画がイタリア・ルネサンス絵画の影響下にあることがわかる。
その上で、より寓意的、つまり何かを暗示しているようであり、その仕草が優雅で優美に描き出されている。

裸体の女性を覆う薄いヴェールが何かを隠している象徴であるとすると、優美さを生み出す源泉はどこにあるのだろう?
ここでは指の動きに注目してみたい。

ポッパエア・サビナの指も、化粧の女性の指も、謎めいていると同時に、実に優美な形をしている。

ガブリエル・デストレと彼女の姉妹では、乳首と宝石をつまむ二人の指が対称をなし、一方は静止する美を、他方は動きの中の美を生み出している。

二人の男に囲まれた中年の女性では、指がテーマと言っていいほど、様々な指の形状が描き出されている。


ダヴィンチやロッソの美を前提にした上で、16世紀の誕生したフランス絵画を見ていくと、そこには明らかにイタリア・ルネサンス絵画とは別の種類の美が成立していることが感じられる。

ここでは指に注目したが、私たちはその謎めいた動きに惹きつけられながら、いつしかその優美さに心を奪われてしまう。
そうした魅力がフランス的な美の伝統の中核を形成し、私たちがフランスに抱くイメージを形作っているといってもいいだろう。

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