ボードレール 「旅」 Baudelaire « Le Voyage » 新しい詩への旅立ち その1

「旅(Le Voyage)」は、1861年に出版された『悪の華(Les Fleurs du mal)』第二版の最後を飾る詩であり、詩集の最終的な帰結を示している。
ちなみに、最初に発表されたのは、1859年4月10日の『フランス・レヴユー(Revue française)』誌。

4行詩36詩節で構成され、全部で144行。『悪の華』の中で、最も長い詩になっている。

幸いyoutubeには、ファブリス・ルキーニの朗読がアップされているので、(最初は2分20秒くらいから。)、素晴らしい朗読を耳にすることができる。

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中世における日本文学の輝き

フランス文学と比較して、日本の中世文学がいかに優れたものだったか、年代を追って見ていくと驚くしかない。

日本の最初の歴史書である『古事記』が成立したのは、712年と言われている。天武天皇の命令で、稗田阿礼が誦習したものを、太 安万侶が書き記したと、序に記されている。

720年には『日本書紀』が編纂され、759年になると、『万葉集』が成立する。

その時代、フランスはまだ国として存在していなかった。そのことに気づくだけでも驚くのではないだろうか。

800年に戴冠したカール大帝の死後、フランク王国が3分割され、その中の西フランク王国がフランスの国土の基本的な部分を形成することになる。
987年に西フランク王国が断絶し、パリ伯ユーグ・カペーがフランス王となり、フランス王国が成立する。

フランス語が成立するのもその間であり、842年、西フランク王国のシャルル2世と東フランク王国ルートヴィヒ2世が締結した「ストラスブールの誓い」の中で初めて、現在のフランス語のベースとなる古フランス語が確認されてると言われている。
従って、当時、フランス語で書かれた文学など考えようもなかった。

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カーメン・マクレエ ジャズ・クラブの雰囲気

カーメン・マクレエの「グレイト・アメリカン・ソングブック」は、いかにもジャズ・クラブという雰囲気を十分に味わわせてくれる。
録音は1972年、ロサンジェルスのジャズ・クラブ「ドンテズ」。

最初は「サテン・ドール」。チャック・ドマニコのベースとマクレエのヴォーカルのデュオが素晴らしい。

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フランツ・リスト 「コンソレーション」Nº. 3

リストの「コンソレーション(慰め)」第3番は、この上もなく穏やかで優しい曲。いつ聞いても、心に安らぎを与えてくれる。

誰がピアノを弾いても美しいのだけれど、ここではホロビッツの演奏で聞いてみよう。

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詩は世界を美しくする  ネルヴァル ボードレール 村上春樹 ビリー・ホリデー

詩は世界を美しくする。

芸術家、詩人は、自分の世界観(ボードレールの言葉では「気質」tempérament)に従って、作品を生み出す。
私たちは、その作品に触れることで、芸術家の世界観に触れ、感性を磨いたり、彼等のものの見方、感じ方を身につけることができる。

詩においても、そのことを具体的に体験することができる。

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ボードレール 「腐った屍」 Baudelaire « Une Charogne » 奇妙な恋愛詩

ボードレールの「腐った屍(Une Charogne)」は、とても奇妙な恋愛詩。

恋人と二人で道を歩いているとき、一匹の動物の腐った死骸を見る。蛆がたかり、肉体は崩れかけている。
そのおぞましい光景を描きながら、愛の歌にする。

どうしてそんなことが可能なのだろう?

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ボードレール 「秋の歌」 Baudelaire « Chant d’automne » 中間の時としての秋

Sisley, Vue de Louveciennes en automne

ボードレールが歌う秋は、夏と冬の間にある中間の時。

夏の厳しい光の名残りに別れを告げながら、それと同時に、暗い冬が迫ってくる予感がする。

皮肉屋で繊細な詩人ボードレールは、そんなどっちつかずの時の不思議な感覚を綴り、愛する女性への愛の言葉とする。

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