フランス語講座 シャルル・ノディエ 「1時あるいは幻影」 Charles Nodier « Une Heure ou la Vision » 4/4

物語を展開する時には、動詞の時制は単純過去が使われる。
https://bohemegalante.com/2019/05/18/systeme-temps-verbe-francais-2/

Au détour d’un passage étroit, une ombre se leva devant mes pieds et disparut dans la haie. Je m’arrêtait en frémissant, et je vis une longue pierre de la forme d’une tombe. J’entendis un soupir ; le feuillage trembla.

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フランス語講座 シャルル・ノディエ 「1時あるいは幻影」 Charles Nodier « Une Heure ou la Vision » 3/4

以下の文の後半で、やっと物語が動き始める。
その印は、動詞の時制によって示される。

Un jour, je m’étais rendu, plus tard que d’habitude, à l’endroit accoutumé ; et, soit que les ténèbres plus obscures eussent trompé mon dessein, soit que la succession de mes idées, plus inégales et plus fortuite, m’eût fait perdre de vue le but de ma course nocturne, la cloche du village frappait une heure, quand je m’aperçus que je ne suivais plus ma route familière, et que mes distractions m’avaient poussé dans un chemin inconnu. je hâtai le pas vers le lieu d’où le son était parti.

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フランス語の語順

時間軸に従って次々に単語を並べていくことで、文章が形作られる。
その際、最初に置かれる要素と、後ろに置かれる要素では、役割が違っている。

最初に置かれる要素は、話し手(書き手)と聞き手(読み手)の間で共有されることになる話題を提示する。
これから何を話すかというテーマ。

後ろに置かれるのは、話題の中で焦点となる事柄。伝えたいこと、知りたいことの中心であり、結論。

一般的に、文の前に置かれる要素が旧情報だとすると、文の後ろには新情報を伝える要素が置かれる。

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フランス語講座 シャルル・ノディエ 「1時あるいは幻影」 Charles Nodier « Une Heure ou la Vision » 2/4

フランス語を最も簡単に読む方法は、前から順番に理解し、決して日本語に訳そうとしないこと。

Mais j’étais obsédé de si tristes pensées, mon imagination se nourrissait de tant de funestes rêveries, que souvent, dans cet état d’exaltation involontaire, qui est familier aux âmes souffrantes, j’ai eu à repousser je ne sais combien de prestiges dont un moment de réflexion me faisait rougir. 

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ブザンソン 聖ヨハネ聖堂 Cathédrale Saint-Jean de Besançon

フランス・コンテ地方の中心都市ブザンソン。
パリから電車で約2時間30分。

ブザンソンは、ヴィクトル・ユゴーやシャルル・ノディエの出身地。
スタンダールの『赤と黒』の舞台の一つとして、また小澤征爾が優勝した指揮者コンクールの開催地として、日本でもよく知られている。

聖ヨハネ聖堂は、1875年から、フランスの歴史遺産に登録されている。

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フランス語講座 シャルル・ノディエ 「1時あるいは幻影」 Charles Nodier « Une Heure ou la Vision » 1/4

19世紀前半の作家シャルル・ノディエの短編小説「1時あるいは幻影」(Une Heure ou la Vision)をフランス語で読み、語学力、読解力のアップを目指すための講座。

フランス語力向上のコツは、
フランス語の語順のまま、意味のブロック毎に前から理解すること。

ぼくは苦々しい思いに満ちた心を抱いていた。

J’avais le cœur plein d’amertume.

1)日本語では、動詞は文の最後に置かれることが多い。
フランス語では、主語と動詞が強く結び付いているために、主語のすぐ後ろに置かれる。

ぼくは・・・抱いていた。
J’avais …

2)形容される語と形容する語の関係は、日本語とフランス語で逆。
日本語では、形容する語が前に置かれ、最後に形容される語が置かれる。
フランス語では、形容される語が前で、形容詞や関係代名詞の文は後ろに続く。

苦々しい思いに満ちた/心
le cœur / plein d’amertume

フランス語の語順のまま理解することは、耳から聞こえてきたフランス語をそのまま理解することにもつながる。

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ラ・フォンテーヌ 「カラスとキツネ」 La Fontaine « Le Corbeau et le Renard » 詩の楽しさを味わう

ラ・フォンテーヌの寓話は、素晴らしく効果的な韻文で書かれている。
音節数と韻の効果の他に、音色やリズムの変化が物語を効果的に盛り上げる。
その巧妙な技法を知ると、フランス語の詩の面白さを実感することができる。

日本でもよく知られている寓話「カラスとキツネ」(Le Corbeau et le Renard)を読みながら、韻文の面白さと素晴らしさを感じてみよう。

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ディオニュソスとアプロディーテ 神秘主義について その3

神秘主義は、現実と超越的実在世界(「雌猫アカの世界」あるいは「生」そのもの)との特別な接触に由来するといってもいいだろう。
https://bohemegalante.com/2020/01/21/monde-selon-la-chatte-aka-mysticisme/

その体験が神話として語られる場合がある。
1)死と再生の神話。
2)陶酔とオルギア

William Bouguereau, La jeunesse de Bacchus

2)陶酔とオルギア
陶酔状態においては、酒、薬物、愛欲などにより忘我(exase)の状態に入り、世界(他者)と私(自己)の自立性が消滅する。

宗教的な体験における、目に見えない超越的な存在と「私」との接触は、別の側面から見れば、「私」の存在を忘却することであり、自己からの解脱とも考えられる。

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死と再生の神話 神秘主義について その2

神秘主義は、現実と超越的実在世界(「雌猫アカの世界」あるいは「生」そのもの)との特別な接触に由来するといってもいいだろう。
https://bohemegalante.com/2020/01/21/monde-selon-la-chatte-aka-mysticisme/

その体験が神話として語られる場合がある。
1)死と再生の神話。
2)陶酔とオルギアの神話。
この二系列の神話は、現実法則(時間の不可逆性、主体と客体の分離)を超越した出来事を、物語として言語化したものだといえる。
古代宗教の中には、それらの物語に基づいた儀礼を定式化したものもある。

Nicolò dell’Abbate L’Enlèvement de Proserpine

1)死と再生
現実世界では、時間は時計によって計られ、決して後戻りはしないと見なされる。
それに対して、「アカの時間」あるいは、生そのものである今においては、時間を時間として感じることはない。それは瞬間でもあり、永遠でもある。

死と再生のつながりは、時間は決して戻らないという現実法則を超越する。
その意味で、時計の針の影が投影されていない生の時間(今=永遠)を思わせる。

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雌猫アカの世界 神秘主義について その1

アカは街角に住む雌の猫。
1月1日、「明けましておめでとう。」と新年の挨拶をする。すると、アカも「ニャア」と答えてくれる。
彼女も人間と同じように、元日の朝は普段より清々しく感じるのだろうか。

でも、アカにとっては、初日の出も、普段の日の出も特別な違いはないだろうなと、考え直す。
猫にカレンダーはないし、もしかしたら朝も昼も夜もないかもしれない。
あるのは、太陽の光の温かさ、空気の冷たさ、空腹等といった体感。近づいてくる人間や、一緒に街角にいる猫仲間に対する好き嫌いの感情。アカはとりわけ嫉妬深い。他の猫が撫でられていると、ひどく嫉妬し、猫パンチを繰り出す。

そんなアカの世界はどのようなものだろう。

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