
「おもてなし」は、日本的な美徳として、とりわけ接客の分野で語られることが多いのだが、もともとの意味が見失われていたり、現実の言動と矛盾していても、それに気づかなかったりする場面も散見される。
「おもてなし」が「もてなし」に「お」を付けて丁寧にした表現であることはわかるのだが、「恩を持って事を成す」とか、「物を持って成し遂げる」といった説明が語源として語られても、今一つピンとこない。
言葉遊びのように「表なし」とされ、表裏のない心でお客様を迎えることが「おもてなし」の語源だという説明が見られることもある。
また、歴史的な例が提示されることもある。聖徳太子の「十七条憲法」の第一条に「和を以て貴しと為す」とあり、そこから「もてなす」という言葉が派生したとする説明である。
ネット上のこうした説明をそのまま信じるのは少し不安なので、岩波書店の『古語辞典』に手を伸ばし、「もてなし(持て成し)」の項目をのぞいてみる。
そこでわかるのは、「モテ」が接頭語であり、「対象の性質や様子を変えずに維持して……する」、「対象を大事にし、また特に相手にして……する」という意味を持つことである。
そして、「持て成し」は、「相手の状態をそのまま大切に保ちながら、それに対して意図的に働きかけて処置する」というのが、最も根本的な意味だとされている。
つまり、まず最初に、対象となる相手を尊重する気持ちがあり、そのうえで相手に対して何かを行う。これが、日本古来の「もてなし」に通じる精神だったことがわかる。
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