

ポール・エリュアール(Paul Éluard)の「自由(La Liberté)」は、第二次世界大戦でフランスがナチス・ドイツに占領されていた時、祖国の解放を訴えかけた詩として知られている。
しかし、それと同時に、詩人が妻のヌーシュに捧げた恋愛詩でもある。
21ある詩節は全て4行からなり、21番目の詩節以外、詩節の4行目は« J’écris ton nom (ぼくは書く 君の名前を)»で終わる。
その前の3行はほぼ« sur(上に) »で始まり、名前を書く場所が様々に指定される。
愛する人の名前を至るところに書きたくなることは、誰にでもあることだろう。
そうした単純でわかりやすい構造は、ポール・エリュアールの詩の特徴だと言われる。
その一方で、詩には句読点がいっさい使われていない。そのことで読み方の自由さは増すが、解釈の曖昧さを生み出すことにもなる。
また、« sur »で示される場所に関して、身近な場所や自然であることもあれば、非常に抽象的であったり、現実と対応しない言葉であることもある。その結果、現実的なものと現実的とはいえないものが混在し、全体としては一つの「超現実(surréalité)」を形作るともいえる。
その視点からは、一見単純で明快に見える「自由」も、シュルレアリスム(超現実主義)の詩に属すると考えることができる。
Liberté
Sur mes cahiers d’écolier
Sur mon pupitre et les arbres
Sur le sable sur la neige
J’écris ton nom
自由
ぼくの学校時代のノートの上に
ぼくの机と木々の上に
砂の上に 雪の上に
ぼくは書く 君の名前を
ジェラール・フィリップの素晴らしい朗読を聞くと、この詩をフランス語で読む喜びを実感できる。約3分の間、美しい朗読に耳を傾けてみよう。