パリのランデブー ジャスミン・ロワ  Jasmine Roy Rendez-vous in Paris

女性が橋を歩いているモノクロの風景。背景には古い建物や観光客が見える。

パリの街並みを背景に、フランス人なら誰でも知っているシャンソンをジャスミン・ロワ(Jasmine Roy)が歌う動画がある。

彼女は非常に歌がうまく、その歌声は「懐メロ」とも言える古き良きシャンソンの時代に心地よく寄り添う。さらに、モノクロで映し出されるパリの映像がノスタルジックな雰囲気を醸し出しており、まるで少し昔のパリを散歩しているかのような気分にさせてくれる。

ようやく夏が終わりを告げ、秋の気配が漂い始めた今の季節。まずはLes Feuilles mortes(枯葉)に耳を傾けてみよう。

Les Feuilles mortes

続きを読む

Desireless Voyage Voyage デザイアレス ヴォワイヤージュ ヴォワイヤージュ フランス人にとっての昭和ノスタルジー? 

フランスのニュースを見ていたら、Lilleの町の骨董市で、Les années 80(80年代)のものを求める人々が話題になっていた。日本で言うと昭和ノスタルジーのようなものだろう。
そして、そのニュースの背景で流れているのが、Desirelessの« Voyage Voyage »だった。

昭和の懐メロを聴くような気分で、歌詞を辿ってみよう。

続きを読む

フランス人女性歌手(?)

これまで耳にしたことのなかったフランスの女性歌手を、YouTubeでたまたま聴いた。名前も経歴もよく知らないまま、ただ曲だけが流れてくる。それぞれに雰囲気があって、声の質も、歌い方も少しずつ違う。

最初に見つけたのは、Camille Brise(カミーユ・ブリーズ)。

続きを読む

ジョン・レノンと荘子 Imagine Nowhere

古代中国の思想家・荘子を読んでいて、ふとジョン・レノンの「イマジン(Imagine)」の歌詞が頭に浮かんだ。
「天国も地獄もなく、頭の上には空があるだけ。そして、みんなが今日だけを生きる。そんな世界を想像してみよう。」という一番の歌詞はおおよそそんな内容だが、それは荘子が説く「万物が斉(ひと)しく、境目のない世界観」と響き合っている。

こうした類似、あるいは一致に気づくと、ビートルズが1965年に発表した「Nowhere Man」も思い出される。(「ひとりぼっちのあいつ」という日本語題が付けられているが、内容を的確に表していないため、ここではその題名は用いないことにする。)
「彼は本当にNowhere Man(どこにもない場所の男)だ。」という一節から始まり、否定形の表現が続いていく。しかしそれは単なる否定ではなく、一つの固定した視点がつくり出す区切りや差異を消し去ろうとする態度だとも解釈できる。ここにも荘子の「斉物(さいぶつ)論」と通じる精神が感じられる。

そんなことを意識しつつ、まず Imagine と Nowhere Man を聴いてみよう。

続きを読む

オー・シャンゼリゼ Les Champs-Élysées

「オー・シャンゼリゼ」は、日本で最もよく知られたシャンソンの一つだが、この「オー」の意味は今でも時々誤って理解されることがある。シャンゼリゼにやって来て、「オー!」と感嘆の声を上げた、というふうに思われているらしい。
しかし、歌詞を見ると、リフレインの部分には « Aux Champs-Élysées » とあり、「オ」は「シャンゼリゼで」という場所を示す前置詞であることがわかる。

歌詞の内容はとてもロマンチックだ。シャンゼリゼをひとり寂しく歩いていた「私」が、偶然出会った「君(あなた)」に恋をする。昨日の夜は赤の他人だったのに、今朝は恋人。朝が明けると同時に、鳥たちが二人の愛を歌ってくれる。その出会いは、偶然ではなく、運命だったのだ。

道で声をかけたとき、「何でもいいから」とにかく話しかけたのは、« pour t’apprivoiser »、つまり、君(あなた)と「絆を結びたかった」からだという。
この « apprivoiser » という動詞は、『星の王子さま』で、キツネが王子さまに「絆を結ぶ」ことの大切さを教える場面でも使われている言葉だ。

そんなことを頭に置きながら、ジョー・ダッサン(Joe Dassin)の歌 « Les Champs-Élysées » を聴いてみよう。ちなみに原題には前置詞は入っていない。

続きを読む

セリーヌ・ディオン アブラハムの記憶 Céline Dion La mémoire d’Abraham

ジャン=ジャック・ゴルドマン(Jean-Jacques Goldman)が作詞・作曲し、セリーヌ・ディオン(Céline Dion)が歌った「アブラハムの記憶」(La mémoire d’Abraham)。

アブラハムは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教に共通する始祖とされる人物であり、彼の記憶に刻まれた出来事は、確かに特定の宗教と結びついた内容を含んでいる。
しかし私たちは、この曲の厳かな雰囲気の中で、苦難の中の祈りから生まれた、未来への希望を感じさせる、かすかな声に耳を傾けたい。

続きを読む

Charles Azenavour Hier encore シャルル・アズナブール 昨日はまだ

シャルル・アズナブール(Charles Aznavour)はフランスを代表するシンガーソングライターで、2018年に94歳で亡くなるまで活動を続けた。

« Hier encore »(昨日はまだ)は、アズナブールの代表作の一つで、過ぎ去った青春時代(20歳の頃)への後悔と哀愁を歌った曲。
若い頃は何も考えず、ばかげたことや自分勝手なことばかりしていた。今になってそのことを振り返り、時間を無駄にしたと思うものの、それでも当時の思い出を懐かしく感じ、まるで昨日のことのように思われる。「昨日はまだ二十歳だった」と感じられるほどに。

続きを読む

Renaud  Mistral gagnant ルノー  ミストラル・ガニャン

1852年生まれのルノー(Renaud)は社会問題や政治に関わるテーマを俗語などを交えて歌う歌手で、フランスでは現在でも一定の人気がある。
そんなルノーには珍しく、1985年に発表した「ミストラル・ガニャン」(Mistral gagant)は、子ども時代への郷愁が強く滲み出した曲で、娘ロリータに捧げられている。
そのために、歌詞の中には、ミストラル・ガニャン、ココ・ボエール、ルドゥドゥ、カール・アン・サック、ミントォなど、すでに発売されなくなったお菓子の名前がたくさん出てくる。

続きを読む

Que reste-t-il de nos amours ? 残されし恋には

« Que reste-t-il de nos amours ? »は、1942年にシャルル・トレネ(Charles Trenet)が歌って大ヒットして以来、今でもフランスで歌い継がれている。

歌詞は非常に明快で、秋の夕べに終わってしまった恋を懐かしみながら、心に残るさまざまなものを思い描いていくという内容。
とても単純な構文の文章で書かれていて、単語が次々に重ねられ、思い出の品が積み重なっていく。

続きを読む