英語の進行形って何?

英語だけ勉強していると気付かないのだが、他の言語を勉強していると、進行形が英語特有の動詞の表現方法であるを知り、驚いてしまう。少なくとも、フランス語などヨーロッパ系の言語には進行形という形は存在しない。

だからこそ、英語の進行形とは何なのか知りたくなってくるのだが、少し調べただけで、解説があまりにも複雑で、何が何だかわからなくなりそうになる。現在進行形は何となくわかるとしても、現在完了進行形って何だろう? それが未来完了進行形とか過去完了進行形とかになり、その細かな用法やニュアンスが説明されると、ますます混乱してしまう。

そこで、原点に戻って考えてみることにした。
いわゆる進行形と呼ばれるのは、be+動詞のing形

動詞のing形には、現在分詞と動名詞という二つの用法がある。

動名詞というのは、動詞を名詞的に使う用法。
例えば、« He is good at playing tennis. »
前置詞 at の後ろは名詞が来るため、動詞playにingを付けて名詞として扱う。

進行形の場合には、be+現在分詞
現在分詞は過去分詞と対比され、現在分詞は動詞を能動的な意味、過去分詞は受動的な意味にする。
opening (開く): opened(開かれた)
そして、be+現在分詞(ing)は進行形になり、be+過去分詞(ed)は受動態になる。

(1)進行形という名前の問題

進行形は英語では、Continuous and progressive aspectsと呼ばれる。つまり、継続と進展の相。日本語の用語では、継続という言葉が省略され、progress(進展)する相だけが、「進行」という言葉で取り上げられている。
そのために、進行形というと、今まさに行われつつあることを指すといった印象が生まれる。

そして、現在進行形であれば、現在形との対比で、次のように説明される。

I play tennis. (現在形)

I am playing tennis. (現在進行形)

現在形では、テニスをするということを指しているのであり、今テニスをしているかどうかは問われない。
現在進行形は、今まさにテニスをしつつあるという事実を示す。

こうした説明でなんとなく分かったような気持ちにはなるのだが、もう少し考えてみると、be+ing形は、「動詞の動作が継続して行われている状態」にアクセントが置かれていることがわかってくる。
それは確かに「進行」中なのだが、それ以上に、それが行われつつあるという「状態」が際立つといえる。

現在進行形のbe動詞を過去形にすれば過去進行形、will beと未来形にすれば未来進行形になる。それらは、現在の時間帯を、過去の時間帯か未来の時間帯に移動させたにすぎない。

I was playing tennis yesterday at noon.   テニスをしていた、昨日の午後。

I will be playing tennis on next monday.   テニスをしているだろう、来週の月曜日に。

どちらの場合も、I played tennisやI will play tennisよりも、テニスをしつつある状態にスポットライトが当てられている。

注意しないといけないことは、日本語ではそれらを区別する表現がないために、日本語に訳して理解しようとするとわけが分からなくなってくる、ということ。
とりわけ、日本語には未来形の表現がないため、未来のことに関しては分からないと感じることが多くある。

進行形という名称にこだわることなく、日本語に訳して理解しようとすることは避け、be+ingはアクションが継続して行われつつある状態を強調する用法だと意識することが、理解の早道になる。

(2)完了形が加わると・・・

be動詞の部分を完了形にして、have been+ingとすることも可能であり、文法書には、現在完了進行形、過去完了進行形、未来完了進行形の解説が詳しく書かれている。
しかし、こうした名称を見るだけで、難しそうとか、わからないと思ってしまわないだろうか。

では、完了形が加わる際のポイントはどこにあるのだろうか? 
それは言うまでもなく、完了形をしっかりと理解していること。
日本人は「完了」と「過去」を混同することがあるが、「完了」は「過去」ではない。過去の時間帯、現在の時間帯、未来の時間帯それぞれで、ある一時点を基準にし、それ以前に完了していることを完了形で示す。

I play tennis. 私はテニスをする。

Il have played tennis for 3 years.  私はテニスをしてきた、3年間。

現在形の場合には、テニスをする、あるいはテニスをしているという意味。
現在完了形では、現在の時点(1)の他に、それ以前のある時点(2:ここでは3年前)が設定され、(2)の時からテニスを始め、それ以来テニスをしてきたという継続性あるいは経験がニュアンスとして表現される。

完了形に進行形が加わると、ある時点(2)から基準になる時点(1)までの間、「動詞の動作が継続して行われている状態」がより強調されることになる。
そのことは、過去・現在・未来、どの時間帯でも変わらない。

I have been playing tennis for 3 hours.  (現在完了進行形) テニスをしていた、3時間の間。

I had been playing tennis for 3 hours when he came to pick me up. (過去完了進行形) 私はテニスをしていた、3時間の間、その時、彼が迎えにきてくれた。

By next April, I will have been playing tennis for 3 years. (未来完了進行形) 来年の4月で、テニスをしていることになる、3年の間。

have, had, will haveは、現在、過去、未来の時間帯にあることを示す。
完了形は、それぞれの時間帯の中で、(2)の時点においてテニスをするという行動が開始され、つまりその行為の開始が「完了」し、その行為が(1)の時点でも終わっていない、というニュアンスを表現する。
つまり、進行形は、完了形における継続のニュアンスをさらに強める役割を果たす。

現在の時間帯の中で、現在完了形と現在完了進行形のニュアンスの違いを、もう1度確認しておこう。

I have played tennis several times this year. (現在完了)

I have been playing tennis for the last two hours. (現在完了進行形)

現在完了は、今年の初めが(2)になり、(1)の時点までの間に、テニスを何度もしてきたことを意味する。
現在完了進行形では、テニスをしている状態が進行し、継続していることが強調される。2時間前(時点2)にテニスを始め、その時から今(時点1)までずっとテニスをしているというニュアンスが強くなる。


以上のことをまとめると次のようになる。

(1)進行形という名前のために誤解を招く恐れがあるが、be+ing形は、「動詞の動作が継続して行われている状態」にアクセントを置くために用いられる。

(2)完了形と進行形が組み合わされる場合、完了形で設定される二つの時点の間での動作の継続性が、進行形によって強調される。

この2つの原則を頭に置くことで、進行形の文章の微妙なニュアンスを徐々に理解することができるようになるだろう。


学校文法で気になる二つの点

(A)日本語との対応

英語の進行形が伝える言葉のニュアンスと日本語の表現は必ずしも対応しない。それにもかかわらず、日本語を通して英語の理解を確認しようとすることがある。

次の日本文に合う英文になるように、 __ に適する動詞を書きなさい。

1. 私は新聞を読んでいる。
I __ the newspaper

2. わたしは新聞を読んでいるところです。
I __ the newspaper.

3. 私は2時間テニスをしている。
 I __ tennis for 2 hours. 

出題者の意図は、「している」という日本語から継続性を読み取り、英語ではそれが進行形で表されるということを理解させることだろう。
しかし、「新聞を読んでいる」と「新聞の読んでいるところ」という日本語の違いは、日常の場面でそれほど意識されることはない。
しかし、この問題では、その日本語を英語にする際には、1.はreadと現在形、2. am readingと現在進行形を用いることが求められる。

「テニスをしている」と言う時、私たちは、今テニスをしているという現在の行為を意味する意図もあれば、その行為をしつつある継続性あるいは進行中という事実を伝えようとすることもある。日本語話者にとって、問題文から「完了」と「継続」のニュアンスを読み取り、I have been playingという英語にしないといけないというのは、なかなか難しい。

こうした出題から学習者が学ぶことは、例題として教えられた英文と日本語訳の対応を覚え、例えば、「わたしは昨日、英語を勉強しました。」という日本語には、« I studied English yesterday. »を、「わたしはそのとき、英語を勉強していました。」という日本語には、« I was studying English then. »という英語を当てはめること。

少し学習が進むと、「明日のこの時間、トニーとテニスをしている。」という日本文から、未来進行形を使った英文を導き出すことが求められる。« I will be playing tennis with Tony this time tomorrow.»

結局、進行形の問題で成績がいい(英語がよくできる)というのは、言葉のニュアンスを感じ取ることではなく、日本語に訳せたり、日本語文から英文を引き出せたりする暗記力で決まるのではないかとさえ思えてくる。

教育現場では、学習者の理解を測定するために、どうしてもこうした設問をせざるえないのかもしれない。そうであったとしても、英語の運用能力を身に付けさせることができるのかどうか、教師が自問する必要があるかもしれない。

(B)語順の問題

英文を理解するために、日本語に訳すことが行われることが多くある。しかし、英語と日本語の語順は異なり、語順が逆転してしまうのだが、日本では漢文にレ点をつけて逆転する伝統に慣れてきたせいなのか、それを当たり前に受け入れている。

I had been talking for over an hour before Tom arrived.
トムが着くまで、私は1時間以上話し込んでいた。

どのような時でも、言葉は前から順番に発せられ、その順番に理解される
« I had been talking »という過去完了進行形の使われた文からは、私が「ある時点からその時まで話していた」ということがわかる。
次に、« for over an hour »(一時間以上)という言葉で時間の長さが限定され、最後に、« before Tom arrived »と付け加えられることで、「トムが到着する前」であったことが分かる。
英語の文章の理解はこのように進むのであり、もしこれが会話であるとすれば、聞き手は言葉の順番に意味を理解していくしかない。

当たり前のことだが、会話において語順の逆転はありえない。それにもかかわらず、私たちは文章を読み理解しようとするとき、日本語に変換する際に語順を逆転しても違和感を感じないでいる。

Tommy was tired because he had been jogging.
ジョギングをしていたから、トミーは疲れてしまった。

I have been studying English very hard since I arrived in London.
ロンドンに着いて以来、英語を熱心に勉強している。

They will have been ready by the time I arrive.
私が到着するころには、彼らの準備ができているはず。

こうした訳文を通して英文を理解しようとすると、言葉は常に前から後ろにと進み、その順番で理解されるというごく当たり前のことが忘れられてしまう。
その結果、耳で聞いて理解することが苦手ということになりかねない。

だからこそ、意味のかたまり毎に、前から理解することを心掛けたい。
トミーが疲れたのは、ジョギングをしていたから。
英語を熱心に勉強しているのは、ロンドンに着いてから。
準備ができているころ、私は到着する。
こんな風に理解する癖を付けておくと、前から順番に英文を理解するコツがつかめるだろう。

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