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英語を勉強する時、日本人にとって一番大きな落とし穴になるのは関係代名詞だろう。
普通に考えれば、言葉は前から聞こえてきて、その語順で理解していく。読む時も同じ。
それなのに、英語の参考書には、、「関係代名詞を含んだ英文を正しい日本語にするには、後ろから戻り訳さなければならない」と書いてあったりする。
« I know the man who is standing under the tree. »を、「私はその木の下に立っている男を知っている。」と訳すことに誰も疑問を持たないし、こうした日本語に訳すことによって英文を理解しようとする。
教室では、英文を理解したことを確認する手段として使われる。
その結果、英語を読むときに、文章の後ろまで読み、前に戻る、などといった読み方をする癖が付いてしまう。
会話の時、言葉は前から順番に流れていくのであり、言葉が逆流することなどありえない。日本人にとって、聞き取りが苦手な理由の一つも、こうしたところに原因があるかもしれない。
そうした問題を頭に置きながら、関係代名詞について考えていこう。
(1)関係代名詞の基本的な考え方
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関係代名詞は、一言で言えば、名詞を説明する文章。
形容詞であればそれだけで名詞の状態や性質がどのようなものかを表示することができる。他方、関係代名詞の場合は、名詞を文章で説明する。
使用される関係代名詞は、以下の二つの要件に従って変化する。
(1)名詞が人か物か?
(2)名詞が続く文章の構文の中で果たす役割は、主語か、目的語か、所有か?
人 | 物 | |
主語 | who | that, which |
目的語 | whom | that, which |
所有 | whose | whose |
(1) my good friend
(2) my friend who is a singer
(3) my friend whom I met yesterday
(4) my friend whose brother is a singer
(1) good :形容詞
(2) friend は、 isの主語。→ whoは主語であることを示す。
(3) friendは、I met 目的語 → whomは目的語であることを示す。
(4) friendは、brotherの所有格(my friend’s brother) → whoseは所有格であることを示す。
文法教育の中で、二つの文を提示し、それらを一つの文に結合させながら、関係代名詞の説明をすることがある。
その目的は、関係代名詞以下の文章の構文の中で、先行する名詞が主語か目的語か所有格かを理解させるため。しかし、関係代名詞とは二つの文を繋ぐ方法といった誤解を与えることになりかねない。
むしろ、次のように説明する方が、理解を容易にするのではないだろうか。
関係代名詞の役割は、名詞を説明すること。その意味で形容詞と近いが、単語ではなく、文章を使う。
考えないといけないことは、(1)名詞が人を意味するか物を意味するか? (2)後ろに続く文章の中で、主語か目的語が所有格か? その二つだけ。
(2)語順と理解
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関係代名詞が使われている英文を理解しようとして、日本語に訳そうとすると、どうしても語順を逆転してしまう。その癖を矯正するのはなかなか難しいのだが、2つの点を意識して練習すると、徐々に英文を後ろから前へと逆転しなくても、理解できるようになる。
もちろん、前からそのままの語順で読むのが当たり前だし、それが英文をもっとも簡単に理解する方法である。
ポイントは以下の二つ。
A. 訳して理解しようとしない。
B. 関係代名詞が出てきたら、それに先行する名詞を説明しているのだと考え、英文の解釈をそのまま続ける。
英文法のサイトから英文と日本語訳を借用し、語順を逆転させる実態を確認しながら、英文を前から理解する練習をしてみよう。
a. There are people who think it is not a big deal.
それが大したことではないと考える人もいる。
ある種の人びとがいる(1)/彼らが考えるには(2)/それは大したことではない(3)
この文は日本語としてはなんとなく不自然だけれど、英文の意味の塊と同じように、(1)(2)(3)の順番で進んでいく。従って、もしそれぞれの塊で分からない部分があれば日本語を参照し、その後でもう1度英文を読んでみると、「英語のままで、前から順番に」理解できるはずである。
b. I saw a rare animal whose tail was very long.
尻尾がとても長い珍しい動物を見ました。
一匹の珍しい動物を見た(1)/その尾はとても長かった。(2)
最初から「尻尾がとても長い珍しい動物」を見たというよりも、珍しい動物を見た(1)と言い、その後から、尾(2)について言及しているのが、この文の語順。
その順番を辿ることで、英文のニュアンスをよりよく理解できる。
c. The car which I bought is so cool.
私が買った車はとてもかっこいい。
その車は(1)/私が買ったのだが(2)/とてもかっこいい。(3)
「私が買った車という訳は、英語と日本語の語順の違いをはっきりと示している。
red car であれば「赤い車」であり、形容詞と名詞の順番で、語順が同じであるために、混乱は起きない。
他方、関係代名詞を使った文を日本語にする場合、名詞(1)とそれを説明する部分(2)の順番が逆転する。そのために、どうしても、「私が買った(2)車(1)」と訳すことになってしまう。
d. I like the current environment in which I’m allowed to take a day off whenever I want.
欲しい時にいつでも休みを取ることが許される今の環境が好きです。
今の環境が好き(1)/その環境の中では、休みを取ることが許されている(2)/望む時はいつでも(3)
日本語訳は、英文では後ろにあるwhenever I want(3)から訳し始め、I’m allowed …(2) へと遡り、最初にある I like…(1)へと至る。
もしこの日本語のように理解するとしたら、英文を後ろから読み始め、前に遡ってこないといけない。
こうした文こそ、意味のかたまり毎に前から理解していき、今の環境が好きなのは(1)、休みが取れる(2)から、しかも希望すればいつでもいい(3)、という風に理解することで、英語の語順のまま理解できる。
e. He was accepted into a difficult high school, which is not surprising.
彼は難関高に合格したが(1)、驚くことではない。(2)
前の文全体を受ける場合、whichを使うが、そうした場合、日本語訳でも前から順番に理解していくことになる。
その意味で、英語を英語のまま前から理解していくことのできるわかりやすい例といえる。
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関係代名詞の含まれる英文は、日本人の英語理解を妨げる大きな要因になっている。
その原因を理解し、英文の語順を逆転させて理解しようとするのではなく、前から理解していくという習慣を身に付けることで、英語が英語として頭に入ってくる。
伝統的に日本では漢文を理解するためにレ点を使い、語順をひっくり返してきた。英語の勉強でも同じ方法を使っていると思うとなかなか興味深くはあるが、もうそろそろ英語は英語のままで理解する習慣を身に付けていきたい。
英語を日本語に訳して理解するのではなく、前から読んでそのまま理解する練習をするために最もよい方法は、朗読を聞きながら文字を追っていくやり方だ。それであれば、決して後戻りすることはない。
物語を大まかにでも知っていると理解が進むので、ラフカディオ・ハーンの「耳なし芳一」で試してみよう。