プロパガンダ 受け取った情報を他の人に伝えたいと思わせる方法

NHKのドキュメンタリー「映像の世紀 ゲッベルス 狂気と熱狂の扇動者」を見た。
ゲッベルスは、アドルフ・ヒットラーの下で、国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が国民の熱狂的な支持を獲得するために大きな役割を果たした宣伝大臣。
NHKの番組紹介には、次のように書かれている。

ベッベルスのプロパガンダの方法は、SNSが通常のコミュニケーション手段となった現在において、そのまま通用する。

番組の最後には、ナチスのプロパガンダに対し、アメリカで、多様性を重視し、ナチスの主張を「信じるな」という映画が作られたことが紹介されている。
こちらは反ナチスであり、正しい主張として紹介されている。しかし、逆の視点から見れば、意見の違うプロパガンダに他ならない。
要するに、「アイデアがシンプルで、日常生活に関連していればいるほど、それをみんなに伝えたいという欲求が強まっていく。」 これが原則なのだ。

現在の社会を振り返ると、短いコメントが発信され、それが瞬く間に拡散していく現実が、日々、目の前を通り過ぎていく。
その際、どのようなコメントであろうと、「表現の自由」という大義名分が主張され、「自由」に伴う「責任」は意識されない。
コメントの発信者は、「フェイク、炎上商法、陰謀論」に対して責任を感じることはなく、大多数の人々はベッベルスのような明確な目的意識も持たないだろう。
目的は、自分の発信が拡散することであり、文字や映像によって発信を続けていく。

そうした現状は資本主義社会の一つのあり方であり、デジタルに関わる様々な産業が巨額の富をもたらし、貧富の格差の拡大を招いている。
国際開発援助NGO「オックスファム」によると、世界の超富豪26人の総資産は、地球上の人口の約半分にあたる約39億人の資産に匹敵する。
アメリカに限っても、超富裕層50人の資産(約2兆ドル)が、下位の50%(1億6500万人)の資産と同等という統計がある。
しかも、アマゾンの創業者ジェフ・ベドスや、テスラ社のイーロン・マスクたちが世界でトップの資産家になるまでの期間は、20年程度にすぎない。

富がそれだけの短期間で一方に集中し、他方から奪われる仕組みが出来上がっている社会では、様々な問題が多発し、人々の間に深い分断が起こることも自然なことだといえる。

その解決策が、最近の日本では、柄谷行人や斉藤幸平らにより、カール・マルクスの『資本論』を読み直すことで模索されたりもしている。
しかし、極度な資本主義社会を変化させる方法が提示されたとしても、実現可能とは思えない。理論は理論に留まる(ように思われる)。



X(旧ツイッター)、テレグラム、youtube、インスタグラムなどのツールが莫大な収益をもたらし、プロパガンダと明示されないメッセージが拡散し続ける現在社会は、意図の善悪を除けば、無数のゲッベルスが日々活動する時代といえるかもしれない。

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