
「人間は考える葦である」という有名な言葉で知られるブレーズ・パスカルに興味を持ったとして、彼について少し調べ始めると、キリスト教の思想家であり、ジャンセニスム、イエズス会、恩寵などといった言葉が真っ先に出てきて、出鼻を挫かれる。
キリスト教の神を中心とした思索が続き、今の私たちが抱く関心とは何の関係もないことばかりが延々と語られるように思われる。
『田舎の友への手紙』は、パスカルの宗教信条と対立するイエズス会の道徳を批難し、神の恩寵に関する彼の考えを提示するために書かれたもの。そのために、私たちとは無関係な議論が続くように感じられるだろう。
しかし、キリスト教内部の論戦という第一義的な表面を取り去ると、実は、アクチュアルな出来事についての視点を提供してくれることがわかってくる。
例えば、「第14の手紙」で問題になるのは、相手が悪人であれば、直接罰してもいいのか、という問題。正当防衛という理由で相手を攻撃することが本当に正当かどうかという問題は、ハマスのテロに対してイスラエルが直接的に報復することが正義であるのかどうか、という問いかけにもつながる。
ここでは、「第14の手紙」の後半部分の一節を取り上げ、パスカルがどのような答えを出すのか、読み取っていこう。
続きを読む



