違う角度から見た世界地図

コロナが終わり、久しぶりに日本からフランスに向かった。飛行時間は14時間以上! その理由は戦争でロシア上空を飛行できないため。
座席のテレビに映る世界地図の上の飛行機の航路を見て、それを実感することになった。

私たちがしばしば目にする世界地図は日本が真ん中にあるものか、あるいはヨーロッパ中心のもの。それに対して、KIXからParisに向かう航路が描かれたこの世界地図は、全く異なる角度から世界を見せてくれる。

そして、そのことは、ロシアとウクライナの戦争だけではなく、それを巡る考え方にも異なった視点をサジェストしてくれる。

飛行機がロシアの上空を飛行できないことは、私たちにとってはとても不便だ。
まだ東西の冷戦が続いていた時代、それと同じ状況で、北回り便は必ずアンカレッジを中継地としていた。飛行時間は18時間程度あったと記憶している。

冷戦が終わり、ソ連の上空を通れるようになると、中継が不要になり、直数便で12時間程度の飛行時間になり、ここのところ私たちはそれが当たり前だと思っていた。

2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争の結果、再び状況が悪化し、最初に示した地図のような状況になっている。

そんな簡単なことをふと考えるだけで、世界の平和が私たちにも直接関係していることが実感された。

では、丸3年が経とうとする戦争がなぜまだ終わらないのか?
その理由は複雑に絡み会い、簡単に言えることではない。

しかし、真っ先にいえることは、兵士として戦うウクライナの人々、ロシアの人々、最近ではロシアに加担する北朝鮮の人々、そして、あまり語られることのないウクライナ寄りの義勇兵として戦う西側の人々、こうした数多くの人々が日々命を落としていることだ。

実は、命を落とすという言い方は表現を和らげるためで、実は、国家の指導者の意向の下でお互いに殺し合っている。
そして、マスコミでは専門家たちがそれぞれの意見を表明しているのだが、日本とフランスでニュアンスの違いが見られる。

日本では、ロシアの専門家あるいは軍事専門家と言われる人々の大部分は、反ロシア的な発言に偏り、プーチンを悪者にして、ロシアの衰退を声高に主張する傾向にある。

一方、フランスでは、3年前に戦争が始まった当初は、ロシアとの経済戦争と言っただけで、戦争という言葉を使うことに神経を尖らせながら、それでもウクライナはヨーロッパの一部であり、ロシアによる侵略を何とか妨げないといけないという論調だった。

しかし、事態が進み、現代では、いわゆる良識派と言われる言論人も、プーチンが勝利したら、さらにロシアは他の国に侵略の手を伸ばす。従って、絶対にプーチンを勝利させてはならない、といった論調が多く見られるようになってきた。

そんな中で、ある軍事専門家が、ロシアは広大な土地を持ち、プーチンに領土的な野心はない、ということを言っていた。
飛行機の中で、いつもとは異なる角度から見た世界地図は、私の中にふとその言葉を思い出させた。
実際、wikipediaを見ると、ロシアの国土は全世界の11%を占め、二番目のカナダ(6.7%)、三番目の中国(6.5%)やアメリカ合衆国(6.5%)よりもはるかに巨大だ。
そんなロシアが、ウクライナの領土のわずかな部分を獲得することに、これほどの戦力を使うだろうか?
そのように考えると、プーチンの狙いが領土ではなく、従って、ウクライナの後は別の国家を侵略するということの論理が、戦争を終わらせず、プーチンを敗北させるまで戦争を続けさせるための口実ではないかとさえ思えてくる。

その理由は何か?
それは別の分析を要する問題だが、とにかく、戦争が続くかぎり、兵士として駆り出された人々が、生きるか死ぬかの戦いを続ける。
それは止めた方がいい、と私は考え続けている。

実は、ロシアがウクライナに侵攻した当初、何度かそうした投稿をこのブログにし、Stingの歌や与謝野晶子の言葉を紹介したりもしたのだが、明白に反ロシア的でない発信が反発を招き、その結果、ブログの購読者が減少するということもあったりした。

今回、パリに向かう飛行機の中で、今までとは違う角度から世界地図を見、ロシアの上空を飛べないことで、ふとそんなことを思ったのだった。

。。。

フランス人の友人たちとは何でも話し合えてきたが、今回の滞在で、ロシア・ウクライナ戦争や、イスラエルによるパレスチナ人への攻撃については、話すのを避けようという気持ちが、心の片隅にうずいている。。。

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