2025年3月7日の日経新聞に”円高”という記事が見られる。

1ドル147-148円で円高という認識。実際、2024年6月には1ドル160円以上になった時期があり、2024年の平均でも152円程度だったので、それと比較すれば円高という表現は間違いではない。
しかし、視野を拡げると、1ドル147円が円高と言えるだろうか?という疑問が湧いてくる。 2015年から10年間という期間に視野を広げると、全く違う事実が見えてくる。
2015年には1ドル121円、2019年では107円平均だった。そこから見たら、147円はとてつもない円安だ。

この一覧表を見ると、2022年から円が急激に、しかも極端に安くなったことがわかる。2021年から見ると、147円は考えられない円安なのだ。
こうしたドル円の変化が物価高に直結していることを、アップル社のmacbook airを例に取って示してみよう。
以下は、2020年から2025年の間に発売された4つのモデルの価格リスト。

2020年にM1のmacbook airが発売された時、ドル・ベースでは999ドル。
当時のドル円は107円であり、単純にかけ算をすると10万6893円。
そして、日本での販売価格は10万4800円。
2022年に発売されたM2のmacbook airは、200ドル値上がりして、1199ドル。
当時のドル円は132円で、単純計算だと15万8268円。
もし2020年ベースの107円であれば、12万8293円。
あくまで単純計算の上だが、円安のために2万9975円、価格がアップしたことになる。
さらに、計算上は15万8268円の製品の日本での販売価格は、16万4800円。
つまり、円安の影響にプラスして、日本のアップル社は6500円程度価格をアップしたことになる。
2025年3月、M4のmacbook airが発売された。
アメリカの販売価格はM1と同じ999ドル。それに対して日本での価格は16万4800円。
現在のドル円を148円だとして、14万7852円。アップル社は円安による値上がり以上に、1万7000円ほど上乗せしたことになる。
別の見方をすると、1ドル約165円として計算している。
なぜそんな値段に設定したのか?
3月5日の日経新聞の記事は、ドル円に関して、円安が進み、1ドル160-165円になるという予想を示している。

アップル社は予め円がさらに安くなることを見越して、現在のドル円ベースよりも20円程度円安の価格設定をしたのだとも考えられる。
しかし、現在のレートから見たら、アップル社に15円以上の利益をもたらすことになることは事実だ。
このように見てくると、現在の物価高は、少なくとも輸入する製品に関しては、この10年のスパンで見れば、円安の影響によるものであることがはっきりしている。
その上で、企業はリスクを見越し、利益を上乗せする手法を採っている可能性がある。
そのことで、価格はますます上昇する。
2020年に999ドルだったmacbook airは10万4800円。2025年に同じ値段の999ドルで発売されたmacbook airは16万4800円。同じ999ドルの商品が、日本では6万円も値上がりしていることになる。
その主な原因が円安なのだ。
そうした中で、1ドル147-8円で”円高”といった短期的な視点が示されると、円安と物価高の関係が見えなくなってしまいかねない。
もちろん、自動車産業や電子機器製造業などの輸出企業は円安によってメリットを受ける。従って、日本経済全体にとって円安は決してデメリットを及ぼすだけではない。
しかし、原材料コストの上昇は国内の物価に直接的な影響を与え、消費者に大きなデメリットをもたらすこともはっきりしている。
だからこそ、1ドル147-148円で円高といった短期的な視野ではなく、より広い視野に立った物価高の対策をすることが、政治に強く求められる。