ステイシー・ケント Stacey Kent 和らぎの声のジャズ・シンガー

ステイシー・ケント(Stacey Kent)は、ジャズ・ファン以外にはあまり知られていない歌手かもしれない。ニュージャージー州に生まれ、ロンドンで本格的に活動を始めてからは、英語、フランス語、ポルトガル語を駆使して歌い、ジャズのみならず、ポップスやボサノヴァなどジャンルを超えた活動を展開している。日本出身のノーベル賞作家カズオ・イシグロのお気に入りの歌手としても知られ、彼が作詞を手がけた楽曲もある。

幸いなことに、YouTubeにはステイシー・ケント自身の公式チャンネルがあり、彼女の楽曲を自由に楽しむことができる。
ここではまず、フランス語のアルバムRaconte-moiから« Le Jardin d’hiver »を聴きながら、彼女の歌声に耳を傾けてみよう。画面にはフランス語の字幕も表示される。

もう一曲、フランス語の歌を。今度は、« Que reste-il de nos amours ? »

2017年にカズオ・イシグロがノーベル賞文学賞を受賞したときには、以下のようなコメントを出している。

カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞しました! とても胸躍る話です!!!
カズオ・イシグロとジム・トムリンソン(ステイシー・ケントの夫)は、2007年以来一緒に私に曲を書いてくれています。グラミー賞にノミネートされ、プラチナ・セールスを博したアルバム« Breakfast On The Morning Train »の曲もそうです。二人は2008年、« The Ice Hotel »でインターナショナル・ソングライティング・コンペティションのジャズ部門「最優秀楽曲賞」を受賞しました。(中略)
とても興奮して、文章になりません。私はイシグロの大ファンでしたが、彼が私とジムのファンということでBBCラジオ4で「無人島に持って行きたい作品」として私たちの曲をかけてくれたことを知ったのはずっと後のことです。そのようにして私たちは出会い、友人になり、そこからトムリンソン/イシグロのソングライティング関係のすべてが始まりました。

« Breakfast on the Morning Tram »

«  I Wish I Could Go Travelling Again »

優しく、心を和らげてくれるステイシー・ケントの歌声で聞く« What a Wonderful World ».

« What a Wonderful World »の背景については、すでに書いたことがある。この曲は、「今が素晴らしい世界である」というよりも、「世界が本当にwonderfulであってほしい」という願いとして受け取るべき歌だろう。ステイシー・ケントの歌声は、その願いにふさわしい。
What a wonderful world 「この素晴らしき世界」とその背景

今は6月。そろそろ梅雨の季節に入る頃だ。そんな時季には、« La saison des pluies »に耳を傾けてみるのも悪くない。


An evening with Kazuo Ishiguro and Stacey Kent

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