プルースト 「花咲く乙女たちのかげに」Marchel Proust « À l’ombre des jeunes filles en fleurs »  複数のアルベルティーヌと複数の私

マルセル・プルーストは心理の分析にかけても超一流の作家であり、『失われた時を求めて(À la recherche du temps perdu)』は私たち読者に、人間とはどのような存在なのか、様々な側面から教えてくれる。

ここでは、第二篇『花咲く乙女たちのかげに(À l’ombre des jeunes filles en fleurs)』の中に登場するアルベルティーヌ(Albertine)の姿をたどりながら、一人の人間の中に様々な人格が混在し、そのどれもが彼女の姿であるということを見ていこう。

最初の部分では、アルベルティーヌの6つの状態に言及される。そこで注意したいことは、どれもが単なる外見の変化ではなく、心と身体のどちらにも関係する生命現象、つまり生理学(phisiologie)的な表現になっていることである。

(1)悲しみ

Certains jours, mince, le teint gris, l’air maussade, une transparence violette descendant obliquement au fond de ses yeux comme il arrive quelquefois pour la mer, elle semblait éprouver une tristesse d’exilée.

何日かの間、ほっそりとした体つきで、顔がくすみ、無愛想な様子をし、スミレ色の透明な光が、時に海でもそうしたことがあるように、斜めに彼女の目の奥に落ちかかり、彼女(アルベルティーヌ)は、追放された女性の悲しみを感じているようだった。

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