
10世紀初頭に編纂された『古今和歌集』は、現代の私たちが当たり前だと思っている四季折々の美しさを感じる感受性を養う上で、決定的な役割を果たした。
そのことは、全20巻で構成される歌集の最初が、春2巻、夏1巻、秋2巻、冬1巻という、季節をテーマに分類された6巻で構成されていることからも推測することができる。
自然の美に対する感受性や、時間の経過とともに全てが失われていくこの世の有様に空しさを感じる感受性は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された『万葉集』でもすでに示されていた。
『古今和歌集』が新たに生み出したのは、暦に則った季節の移り変わり。
より具体的に言えば、春の巻から冬の巻を通して、立春から年の暮れまでという、一年を通した季節の変化を明確に意識し、時間の流れに四季という枠組みを付け加えたということになる。
では、それによって何か変わるのか?
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