「国際法(International law)」では、領土の取得について、「無主地」(terra nullius)に対する「先占」という考え方が認められている。
それは、非常に単純化して言えば、主権が確立していないと考えられる土地に関しては、「発見」した主体が所有権を獲得できる、という原理に基づいている。

その原則は、15世紀から始まったいわゆる大航海時代以来、新大陸や新航路「発見」に続き、「文明国」が世界各地を支配下に置いていく過程で成立したものであり、様々な利害関係が交錯する中でも、常に「国際法」の土台となってきた。
(歴史的な展開については、島田征夫「国際法上の無主地先占の法理 : 続・19世紀慣習国際法の研究」に詳しく記載されている。)

日本においても、江戸時代後期から明治維新直後にかけて、へンリー・ホイートンの原書を北京で活動していたアメリカ人宣教師ウィリアムス・マーチンが漢訳した『万国公法(Elements of International Law )』や、セオドア・D・ウールジー著・箕作麟祥訳『国際法 一名万国公法(Introduction to the Study of International Law)』などを通し、「国際法」の理解が進んでいった。
「無主地」とは、ある土地に人間が住んでいたとしても、主権が確立していないと見なされる未開の土地を指す。
「占有」とは、領有する意図を持ち、他の国よりも先に「無主地」を実行支配すること。
1874年(明治7年)、明治政府が行った台湾出兵は、「無主地・占有」の概念を巧みに利用したものであり、日本が支配される側から支配する側へと移行する最初の一歩だったと考えることができる。
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