現代の病 誤った正義感が生む攻撃性

SNS上では攻撃性が増し、発信者が、自分とは全く関係がなく、ネット上で流れてくるごくわずかな情報しか知らないにもかかわらず、そこから偽りの情報を作り出し、特定の人物に向かって激しい言葉を浴びせる状況が続いている。

例えば、妻を殺害された夫が、現場となったアパートを26年間借り続け、犯人逮捕につながった「名古屋主婦殺害事件」が報道された後、ネット空間では、この被害者遺族である夫が誹謗中傷され、新たな傷を負っているという。

名古屋市西区のアパートで1999年に住人の主婦、高羽奈美子さん=当時(32)=が刺殺された事件は、容疑者が逮捕されてから間もなく1カ月がたつ。この間、インターネット上では高羽さんの夫・悟さん(69)への「身内を売った商売」「闇がありそうな人物」といった誹謗(ひぼう)中傷が相次いでいる。虚偽内容の書き込みもあり、悟さんは愛知県警に被害届を出すことを検討している。
(中日新聞、2025年11月29日) 
https://www.chunichi.co.jp/article/1171289

なぜ、このような攻撃性がこれほど頻繁に起きてしまうのだろうか。

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現代的な攻撃性の源 フロイトの精神分析理論を参考に

現代社会では、マスメディアでも、SNSでも、YouTubeでも、激しい言葉が飛び交い、ひとつの対象に向けて一斉に攻撃が加えられる場面をしばしば目にする。
事件や人物の情報に触れたとき、多くの発信者は、自分の知識が本当に正しいのかとか、その対象と自分との関係はどうなのかといったことは意識せず、過激な言葉を放つ。そして、その言葉がどんな結果をもたらすかについて、責任を引き受ける気配はない。

原因としてよく言われるのは「匿名性」だ。しかし、コメンテーターやYouTubeの配信者は、名前がはっきりしている。むしろ名前が知られているほうが、情報はあっという間に広がっていく。
SNSでも、「炎上」が再生回数を押し上げ、発信者の収入につながるシステムが出来上がっている。

こうした居心地の悪い状況を、どう理解すればいいのか。そんなことを考えていたとき、たまたまフロイトの「自我とエス」を読んでいて、なるほどと腑に落ちることがあった。
結論から言えば、それは「快楽原則」に従ったリビドー(欲動)の満足であり、対象そのものはどうでもいい、ということだ。そう思うと、いま目にしている光景の光源がどこにあるのか、少しだけだとしても見えてくる。

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