「死(la mort)」という言葉は不吉な印象を与えるが、「恋人たちの死(La Mort des amants)」において、ボードレールは「死」に肯定的な役割を与えたと考えられる。
では、その肯定的な役割とは何か? そしてどのようにしてその逆転を行ったのだろう?

その疑問の答えを考えていくことで、ボードレールの世界において、恋人たち(les amants)を結び付ける愛(エロス)がどこにつながるのかを知ることができる。
まず最初に「恋人たちの死」は非常に形式が整った定型詩であることを確認しておこう。
2つの四行詩節と2つの三行詩節で構成されるソネ(4/4/3/3)で、一行の詩句は10音節、しかも多くの詩句は5/5の区切りが意味の区切れと対応する。
韻の連なりは、ABAB / ABAB / CCD EDE.
動詞は全て単純未来形で活用され、未来のこと、あるいは今頭の中で考えていることが未来に投影して語られている。そのことは、このソネを理解する上で重要な意味を持っている。
第1詩節の最初の言葉はnous。詩の題名から、「私たち」は恋人であると推測することが求められる。
Nous aurons des lits pleins d’odeurs légères,
Des divans profonds comme des tombeaux,
Et d’étranges fleurs sur des étagères,
Écloses pour nous sous des cieux plus beaux.











