アメリカ合衆国は古代ローマの時代からイタリアと同盟関係にあった (ドナルド・トランプ大統領)

アメリカ合衆国は、古代ローマの時代からイタリアと同盟関係にあった。

こんな発言を、アメリカ大統領であるドナルド・トランプ氏がしたという記事を目にして、思わず大爆笑してしまった。
(なお、私のこの投稿の直後に、このトランプ発言はフェイクニュースであるとのご指摘をいただきました。深く感謝いたします。)

西ローマ帝国の滅亡は西暦476年であり、メイフラワー号がイギリスから、現在のアメリカ合衆国マサチューセッツ州プリマスに上陸したのは1620年のことである。
普通に考えれば、アメリカ合衆国の大統領がこのような発言をするはずはないと断言できる。

だが、このニュース自体がフェイクであったとしても、トランプ氏の場合には、「もしかすると本当に言ったのかもしれない」と思ってしまうところが、むしろ恐ろしい。というのも、彼はたとえ発言がフェイクだと指摘されても、それを訂正しないことを常としているからである。

このトランプ氏は地球温暖化に対しても懐疑的であり、それを「史上最大の詐欺」だと述べている。そして、その発言に同調するかのように、参政党の神谷宗幣氏は次のように発言した。

日本だけですよ、CO₂(二酸化炭素)で地球の気候が変動するなんて言ってるのは。地球の気候なんてね、ずっと変動しまくってんです。

神谷氏は本当に、国連の「COP(締約国会議)」において地球温暖化対策が議論され、2015年のパリ協定に基づいて世界各国が温室効果ガス削減に努めているという事実を知らないのだろうか。
もし彼が誠実であるとすれば、「日本だけ」という言葉は彼の本心なのだろう。しかし、COPの存在を知っているのであれば、「日本だけ」という発言は、意図的な噓ということになる。

この神谷氏が代表を務める参政党の支持を得て、福井県知事選挙に立候補した元外務省職員の石田嵩人氏は、SNSで次のような発言をした。

私は移民政策には反対です。理由は日本はまず単一民族国家です。

日本が「単一民族国家」であるという発想が誤りであることは、仮に外務省の入省試験でこのような回答を書けば不合格になる、という別の外務省職員の証言からも明らかである。
つまり石田氏は、選挙戦を有利に進めるために、科学的にも、歴史的にも、さらには外交的にも否定される見解を、あえて発信したことになる。
そうであるならば、これは事実誤認ではなく、意図的に噓を述べたと判断せざるを得ない。


ちなみに、「日本単一民族」説の危険性は、日本がかつて植民地に対して行った同化政策を想起すれば、容易に理解できる。

台湾(1895~1945年)や朝鮮半島(1910~1945年)といった植民地において、日本は同化政策を採用した。
現地の人々を二等・三等市民として区別し、差別的に扱う一方で、日本語教育を強制し、さらに国家神道の受容や日本式の姓の採用を求める政策を推し進めたのである。

とりわけ朝鮮半島においては、「日韓同祖論(にっかんどうそろん)」が掲げられ、日本と朝鮮の民族は祖先を同じくし、兄弟、あるいは本家と分家にたとえられる関係にあり、本来一体となるべき存在である、という主張のもとで同化政策が正当化された。

そして現在、こうした植民地政策の歴史を振り返ると、一部の人々はそれを「自虐史観」と呼び、日本を貶めるものだと批判する。
しかし、事実を正面から認め、その反省を行うことは、決して自虐ではない。それは歴史に対する責任を果たす行為であり、むしろ日本人が自国に対して正しいプライドを持つ態度だと言える。
反省を恥とみなす姿勢を「日本的」と呼ぶのであれば、それは明らかに誤りであり、むしろ恥ずべき態度である。


現代の日本社会において、無知ゆえの誤り、あるいは意図的な噓が、容易に受け入れられてしまう土壌が形成されていることは、これからの日本を考える上で、きわめて深刻な問題であるに違いない。

実際、福井県知事選挙では石田嵩人氏が当選した。そして当選後になってから、「日本は単一民族国家」という自身の投稿について、これは「個人的な見解」であり、訂正すると述べた。さらに続けて、「単一民族云々というよりも、移民や外国人労働者を無秩序かつ無計画に受け入れることで問題が生じる、という文脈で発言したものであり、その点については訂正したい」と説明している。

しかし、この事後的な訂正発言は、石田氏の狙いが、「単一民族国家」という言葉に強く反応する人々の支持を得て、投票行動につなげることにあったことを、かえって明確に示している。
そして彼が実際に当選したということは、事実に反し、しかも歴史的・外交的に重大な問題をはらむ発言に対して、少なからぬ人々が賛同を示したことを証明しているのである。

こうした人々の主張を支えているのは、基本的には次のような考え方だろうと推測される。

マスコミはオールドメディア。そうした記事を読むのではなく、自分でSNSの情報から、トランプや政治家達、市民の声など事実だけを拾って、自分なりに状況を把握して考えて行くべきだ。

マスコミは一部の利権のためにフェイクニュースを流しているので、それに騙されてはいけない。SNSは「市民の声」であり、そこに「事実」がある。
この発言の主にとって、ポイントは「自分で」「自分なりに」という言葉であり、「自分」はオールドメディアに騙されない人間であり、だから「事実」を知ることができる。 その結果、事実の側にいるのは、「トランプや政治家達、市民」だという結論に達している。

そうした人々が知る事実から出発すると、例えば「単一民族国家」を守るための「(不法)移民対策」は、次のような言葉に集約されるだろう。

日本保守党の代表が言っていたが、一度移民政策が失敗したからってニ度と元には戻らない。日本は慎重に移民や外国人に対しての政策を行うべき。

移民排除政策に関してはトランプが正しく、日本も見習った方が良い。移民を受け入れるのが正義とは限らない。移民受け入れは 欧米にありがちな、浅はかな考えの自己満足だ。

トランプがやるっているように、移民の問題は世界中で切実。 日本にも不法移民が数多くいて、埼玉県ではクルド人が大問題になっている。彼らは宗教問題や価値観が全く日本人とは違う。そういう人間が大勢入り込んで来る事には反対。
ヨーロッパでも移民の問題が深刻で、他国の人種から国を乗っ取られる危機に陥っている。フランスやイギリスなど滅茶苦茶である。
日本は孤島の島国なので、陸続きの国よりもましだが、これが中国との陸続きだったら大変な事になる。

日本は島国だし、移民には向かない。それに、移民で来た人も歳をとる。働けなくなったときさらに高齢人口が増えてどうにもならない状況になってしまう。

日本の維持のために、一定数の移民を厳しい条件付き(ムスリムはより厳しく制限)で受け入れるべき。片山大臣がダボスで、欧米の轍は踏まないとはっきりと発言した。それが可能なのかは私たち次第。

こうした発言の背後には、トランプ大統領の存在が大きく影を落としていることがわかる。保守党や参政党、そして最後に名前が挙がる片山大臣が所属する自民党の保守勢力もまた、その影響下にあると言ってよい。

移民対策については、単に「移民」ではなく「不法」という言葉を付すことで、主張の正当化が図られることが多い。しかし、たとえばクルド人の例のように、本来は個々人の問題であるはずの事象を、民族全体の問題へとすり替え、一般化してしまっている点に、彼ら自身はあまり自覚的ではないように見える。
その結果、「宗教や価値観が異なる人間の入国には反対だ」とか、「ムスリムはより厳格に制限すべきだ」といった発言が平然となされ、実際には拒否の対象が「不法入国者」だけにとどまっていないことを、自ら明かしてしまっている。

もう一つ、日本的だと言える特徴は、「島国」という言葉を用い、大陸と海で隔てられていることを日本の特殊性とみなし、それが「日本単一民族国家説」を正当化する要因であるかのように思い込んでいる点である。しかし、古代において人々の交流は、陸路よりもむしろ海路の方が容易であり、日本列島と大陸との間で活発な交流が行われていたことは、歴史が明確に示している。

また、SNSやリール動画などを通じて積極的に情報を得ようとしていることは、「日本は孤立した島国だ」と語る一方で、フランスやイギリスの事例を持ち出し、さらにはムスリムやダボス会議について言及している点からも推測できる。だが、そこで流入してくる情報が、はたして彼らの言う「オールドメディア」よりも、より正確に「事実」を伝えているのかどうかについては、強い疑問を抱かざるを得ない。


私は文学作品を読むことを仕事とし、「読むこと」そのものを長く模索してきた。だが近年、不正確な情報に基づきながら、「自分なりに」考えているつもりの人々が増えている社会に、強い危惧を覚えている。

その延長として、社会現象を「読む」ことにも目を向けるようになったのだが、SNSを主な情報源とする人々には、言葉がほとんど届かないという現実を痛感している。
そこでは、短い文章や映像によって結論だけが端的に示され、その内容が煽動的で、強い刺激を与えるものであることこそが、拡散の条件になっているからだ。

言葉を伝えるということは、実に難しい。

アメリカ合衆国は古代ローマの時代からイタリアと同盟関係にあった (ドナルド・トランプ大統領)」への2件のフィードバック

  1. RS のアバター RS 2026-02-01 / 10:00

    毎度楽しみに読ませていただいています。

    米国大統領の件の発言については私自身目にしたこともありますが、一応のところは「フェイクニュース」のようですので、その後の参政党勢の諸発言と同列で扱うのはややミスリーディングかなと思ってしまいました。(すでにご承知の上でしたらすみません)

    https://www.yahoo.com/news/articles/fact-check-rumor-trump-once-110000139.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAIgV3kH24gLQhY-dGvkxS9DLNtdiQUg46QSLq57a1Ex4NsnVOrraCcBjn138GTBbd_Nmx6qIEo8KEasVYKjU4Bi2G68SlYVY53UTNchTsWjA7Z4ZmpKbB2FOozRjz5KLuDcPlKkhJBQAm17yI1dh-Xic0tqgIMhoxdbFxwNfMUi7

    とはいえ一新興国に過ぎないアメリカ合州国が「古代ローマ」の遺産を共にするという歴史認識自体が、日本人にとっては極めて興味深く感じます。

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    • honuzim のアバター honuzim 2026-02-01 / 10:06

      ご指摘ありがとうございます。
      さすがにフェイクなのですね。でも、トランプ大統領なら言いそう、と思ってしまうことが、恐いところです。

      ご指摘に基づいて、もう少し書き方を工夫してみます。
      いずれにせよ、ご一報いただき、感謝します。

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