ネタバレはあり? 映画の場合

ネット上では、「ネタバレあり」とか「ネタバレ注意」とかいうように、「ネタバレ」という言葉にしばしば出会う。
映画であれば、あらすじを最後まで語るとか、とりわけ最後に準備されている大どんでん返しをバラしてしまうと観客の楽しみが損なわれると考えられ、「ネタバレ注意」と言われることがある。

しかし、ふと振り返ってみると、好きな映画ならば、2度、3度と見ることはよくある。その場合には、ネタはバレている。でも楽しむことができる。

そんなことを考えながら、ネタバレについて考えてみよう。

出発点は、ビリー・ワイルダー監督の「情婦(原題:Witness for the Prosecution」)。
アガサ・クリスティの短編小説「検察側の証人」が原作で、最後の最後に大々どんでん返しがあり、本当に面白い。
そして、映画の最後に、次のクレジットが入る。

The management of this theater suggests that, for the greater entertainment of your friends who have not yet seen the picture, you will not divulge to anyone the secret of the ending of Witness for the Prosecution.

要するに、映画をまだ見ていない友だちが最大限に楽しめるように、映画の最後に置かれた秘密を漏らさないようにして下さい、という内容。

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ビリー・ワイルダー監督「情婦」Witness for the Prosecution

映画を解説を見ていると、「ネタバレ注意」と書かれているのを見かけることがある。その表現は、ストーリーの結末まで書いてあることを予告している。

ネタバレに関して考える時、最も興味深いのは、ビリー・ワイルダー監督の「情婦(Witness for the Prosecution:検察側の証人)」だろう。
タイトルエンドが出た後、次のようなナレーションと字幕が流れる。

for the greater entertainment of your friends who have not yet seen the picture, you will not divulge to anyone the secret of the ending of Witness for the Prosecution.
この映画をまだ見ていないご友人たちが大いに楽しめるように、「検察側の証人」の結末の秘密を誰にも明かさないようにしてください。

このナレーションをそのまま信じれば、映画制作者自身が、映画の楽しみはストーリーの結末にあると言っていることになる。

しかし、ふと立ち止まって考えてみよう。
好きな映画であれば、2度3度と見ることはよくある。その場合にはストーリーは全て知っていて、ネタバレの状態で見ている。
そして、映画は何度見ても、その都度発見があり、楽しい。

そのように考えると、映画にとってストーリーとは何かという疑問が浮かんでくる。

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