坂口安吾 文学のふるさと — 伊勢物語六段「芥川」をめぐって

坂口安吾の作品を読んでいると、残酷な場面の後にも救いが示されず、ハッピーエンドにも至らないため、読者である私たちはしばしば途方に暮れてしまう。読み終えた後にもカタルシスがない。それでもなお、彼の作品をつい読んでしまうのはなぜだろうか。

その問いに対して、坂口安吾自身が答えてくれているかのようなエッセーがある。それが、1941年に発表された文学論「文学のふるさと」だ。

このエッセーの冒頭で、安吾はフランスの作家シャルル・ペローの「赤ずきん」を取り上げる。そこでは、少女が狼に食べられたところで物語が終わり、狩人による救出劇は存在しない。人間が狼にむしゃむしゃと食べられる場面で物語は閉じられ、そこには救いがない。

安吾は、「救いのなさこそが救いである」という逆説的な議論を展開し、そこに「文学のふるさと」を見出す。その展開の中で、『伊勢物語』第六段「芥川」を取り上げている。

ここでは、愛する女が鬼に食べられて終わるという、救いのない「芥川」の物語を辿りながら、坂口安吾の文学観について考えてみたい。

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