鴨長明『方丈記』を読む 1/4 日本的心性と美

「行く川の流れは絶(た)えずして、しかも本(もと)の水にあらず。」で始まる『方丈記』は、現代の読者でも、日本語の美しさを体感することができ、しかも、日本的な心の在り方を知ることができる、大変に優れた文学作品。

全体は4つの部分から構成される。
冒頭に序が置かれ、次に5つの災害の記述が続く。その後、自然の中にたたずむ極小の住居(方丈)での隠遁生活が描かれ、最後に、悟りきらない自分を揶揄するような後書きが置かれている。

最近では、災害文学とか、ミニマリストな生き方の勧めとして読まれることがある。
しかし、そうしたhow toもの的な読み方をすると、『方丈記』の文化的な豊かさがすっぽりと抜け落ちてしまいかねない。

ここでは、人生訓的な読み方ではなく、作品そのものの富を吸収することができるような読み方を試みたい。
そのためには、多少分からない部分があったとしても、鴨長明が鎌倉時代の初期に書いたままの言葉を読むことが大切になる。

まずは、序の文を、youtubeにアップされている朗読に耳を傾けながら、流れるような美しさを持った長明自身の言葉で読んでみよう。

(10秒から2分16秒まで。)
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