ボーマルシェ セビリアの理髪師 Beaumarchais Le Barbier de Séville 誹謗・中傷の技術 Art de la calomnie

『セビリアの理髪師(Le Barbier de Séville)』は1775年に初演されたボーマルシェの戯曲。
後に、ロッシーニによって作曲され、喜劇の内容を持つオペラとして現在でも人気を博している。

若い男女(アルマヴィヴァ伯爵とロジーヌ)の恋愛をめぐり、二人を助ける召使い(フィガロ)、ロジーヌと結婚しようとする医師(バルトロ)、バルトロの味方をする音楽教師(バジール)たちが繰り広げる物語は、18世紀後半のフランス革命を前にした時代には、権力者に対する市民の知恵を表現したものと受け取られ、上演許可までに紆余曲折があったことが知られている。

今回はそうした時代的な考察を抜きにして、アルマヴィヴァ伯爵が町に来ていることを知った音楽教師バジールが、バルトロに向かって伯爵を厄介払いする策略を告げる場面を読んでいくことにする。

その策略とはcalomnie、つまり、相手を悪く言い、悪い噂を広めること。
これは、現代の社会において、SNSやTwitterなどの手段でばらまかれる悪意ある言葉がどのように力を振るうのかを考えることにつながる問題でもある。

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